第一編 総則 第二編 物権 第三編 債権 第四編 親族 第五編 相続

民法 第五編 相続・附則

(失効)

この条文は,平成16年法律第147号による一部改正前のものです。

目次

 第五編 相続
  第一章 総則(第八百八十二条−第八百八十五条)
  第二章 相続人(第八百八十六条−第八百九十五条)
  第三章 相続の効力
   第一節 総則(第八百九十六条−第八百九十九条)
   第二節 相続分(第九百条−第九百五条)
   第三節 遺産の分割(第九百六条−第九百十四条)
  第四章 相続の承認及び放棄
   第一節 総則(第九百十五条−第九百十九条)
   第二節 承認
    第一款 単純承認(第九百二十条・第九百二十一条)
    第二款 限定承認(第九百二十二条−第九百三十七条)
   第三節 放棄(第九百三十八条−第九百四十条)
  第五章 財産の分離(第九百四十一条−第九百五十条)
  第六章 相続人の不存在(第九百五十一条−第九百五十九条)
  第七章 遺言
   第一節 総則(第九百六十条−第九百六十六条)
   第二節 遺言の方式
    第一款 普通の方式(第九百六十七条−第九百七十五条)
    第二款 特別の方式(第九百七十六条−第九百八十四条)
   第三節 遺言の効力(第九百八十五条−第千三条)
   第四節 遺言の執行(第千四条−第千二十一条)
   第五節 遺言の取消(第千二十二条−第千二十七条)
  第八章 遺留分(第千二十八条−第千四十四条)

第一章 総則

第八百八十二条 相続は、死亡によつて開始する。

第八百八十三条 相続は、被相続人の住所において開始する。

第八百八十四条 相続回復の請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権を侵害された事実を知つた時から五年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。相続開始の時から二十年を経過したときも、同様である。

第八百八十五条 相続財産に関する費用は、その財産の中から、これを支弁する。但し、相続人の過失によるものは、この限りでない。
2 前項の費用は、遺留分権利者が贈与の減殺によつて得た財産を以て、これを支弁することを要しない。

第二章 相続人

第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、これを適用しない。

第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によつて、その相続権を失つたときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。但し、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によつて、その代襲相続権を失つた場合にこれを準用する。

第八百八十八条 削除

第八百八十九条 左に掲げる者は、第八百八十七条の規定によつて相続人となるべき者がない場合には、左の順位に従つて相続人となる。
第一 直系尊属。但し、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
第二 兄弟姉妹
2 第八百八十七条第二項の規定は、前項第二号の場合にこれを準用する。

第八百九十条 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、前三条の規定によつて相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。

第八百九十一条 左に掲げる者は、相続人となることができない。
 一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位に在る者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
 二 被相続人の殺害されたことを知つて、これを告発せず、又は告訴しなかつた者。但し、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であつたときは、この限りでない。
 三 詐欺又は強迫によつて、被相続人が相続に関する遺言をし、これを取り消し、又はこれを変更することを妨げた者
 四 詐欺又は強迫によつて、被相続人に相続に関する遺言をさせ、これを取り消させ、又はこれを変更させた者
 五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があつたときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

第八百九十三条 被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示したときは、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければならない。この場合において、廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼつてその効力を生ずる。

第八百九十四条 被相続人は、何時でも、推定相続人の廃除の取消を家庭裁判所に請求することができる。
2 前条の規定は、廃除の取消にこれを準用する。

第八百九十五条 推定相続人の廃除又はその取消の請求があつた後その審判が確定する前に相続が開始したときは、家庭裁判所は、親族、利害関係人又は検察官の請求によつて、遺産の管理について必要な処分を命ずることができる。廃除の遺言があつたときも、同様である。
2 家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規定を準用する。

第三章 相続の効力

第一節 総則

第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。但し、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従つて祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従つて祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が、これを承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明かでないときは、前項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。

第八百九十八条 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。

第八百九十九条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

第二節 相続分

第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、左の規定に従う。
 一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
 二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
 三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
 四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。但し、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

第九百一条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定によつて相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであつたものと同じである。但し、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであつた部分について、前条の規定に従つてその相続分を定める。
2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定によつて兄弟姉妹の子が相続人となる場合にこれを準用する。

第九百二条 被相続人は、前二条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。但し、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。
2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定によつてこれを定める。

第九百三条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定によつて算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額を以てその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なつた意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に反しない範囲内で、その効力を有する。

第九百四条 前条に掲げる贈与の価額は、受贈者の行為によつて、その目的たる財産が滅失し、又はその価格の増減があつたときでも、相続開始の当時なお原状のままで在るものとみなしてこれを定める。

第九百四条の二 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定によつて算定した相続分に寄与分を加えた額をもつてその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した額を超えることができない。
4 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があつた場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。

第九百五条 共同相続人の一人が分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項に定める権利は、一箇月以内にこれを行わなければならない。

第三節 遺産の分割

第九百六条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

第九百七条 共同相続人は、第九百八条の規定によつて被相続人が遺言で禁じた場合を除く外、何時でも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、分割を禁ずることができる。

第九百八条 被相続人は、遺言で、分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間内分割を禁ずることができる。

第九百九条 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼつてその効力を生ずる。但し、第三者の権利を害することができない。

第九百十条 相続の開始後認知によつて相続人となつた者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

第九百十一条 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責に任ずる。

第九百十二条 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が分割によつて受けた債権について、分割の当時における債務者の資力を担保する。
2 弁済期に至らない債権及び停止条件附の債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。

第九百十三条 担保の責に任ずる共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、各々その相続分に応じてこれを分担する。但し、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。

第九百十四条 前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、これを適用しない。

第四章 相続の承認及び放棄

第一節 総則

第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があつたことを知つた時から三箇月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。但し、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によつて、家庭裁判所において、これを伸長することができる。
2 相続人は、承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。

第九百十六条 相続人が承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があつたことを知つた時から、これを起算する。

第九百十七条 相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第九百十五条第一項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があつたことを知つた時から、これを起算する。

第九百十八条 相続人は、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産を管理しなければならない。但し、承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
2 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によつて、何時でも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
3 家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規定を準用する。

第九百十九条 承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、これを取り消すことができない。
2 前項の規定は、第一編及び前編の規定によつて承認又は放棄の取消をすることを妨げない。但し、その取消権は、追認をすることができる時から六箇月間これを行わないときは、時効によつて消滅する。承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様である。
3 前項の規定によつて限定承認又は放棄の取消をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

第二節 承認

第一款 単純承認

第九百二十条 相続人が単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

第九百二十一条 左に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
 一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。但し、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
 二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は放棄をしなかつたとき。
 三 相続人が、限定承認又は放棄をした後でも、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを財産目録中に記載しなかつたとき。但し、その相続人が放棄をしたことによつて相続人となつた者が承認をした後は、この限りでない。

第二款 限定承認

第九百二十二条 相続人は、相続によつて得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、承認をすることができる。

第九百二十三条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。

第九百二十四条 相続人が限定承認をしようとするときは、第九百十五条第一項の期間内に、財産目録を調製してこれを家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない。

第九百二十五条 相続人が限定承認をしたときは、その被相続人に対して有した権利義務は、消滅しなかつたものとみなす。

第九百二十六条 限定承認者は、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産の管理を継続しなければならない。
2 第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項、第二項及び第九百十八条第二項、第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第九百二十七条 限定承認者は、限定承認をした後五日以内に、一切の相続債権者及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。
2 第七十九条第二項及び第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第九百二十八条 限定承認者は、前条第一項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。

第九百二十九条 第九百二十七条第一項の期間が満了した後は、限定承認者は、相続財産を以て、その期間内に申し出た債権者その他知れた債権者に、各々その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但し、優先権を有する債権者の権利を害することができない。

第九百三十条 限定承認者は、弁済期に至らない債権でも、前条の規定によつてこれを弁済しなければならない。
2 条件附の債権又は存続期間の不確定な債権は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従つて、これを弁済しなければならない。

第九百三十一条 限定承認者は、前二条の規定によつて各債権者に弁済をした後でなければ、受遺者に弁済をすることができない。

第九百三十二条 前三条の規定に従つて弁済をするにつき相続財産を売却する必要があるときは、限定承認者は、これを競売に付しなければならない。但し、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い相続財産の全部又は一部の価額を弁済して、その競売を止めることができる。

第九百三十三条 相続債権者及び受遺者は、自己の費用で、相続財産の競売又は鑑定に参加することができる。この場合には、第二百六十条第二項の規定を準用する。

第九百三十四条 限定承認者が、第九百二十七条に定める公告若しくは催告をすることを怠り、又は同条第一項の期間内にある債権者若しくは受遺者に弁済をしたことによつて他の債権者若しくは受遺者に弁済をすることができなくなつたときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。第九百二十九条乃至第九百三十一条の規定に違反して弁済をしたときも、同様である。
2 前項の規定は、情を知つて不当に弁済を受けた債権者又は受遺者に対する他の債権者又は受遺者の求償を妨げない。
3 第七百二十四条の規定は、前二項の場合にも、これを適用する。

第九百三十五条 第九百二十七条第一項の期間内に申し出なかつた債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかつたものは、残余財産についてのみその権利を行うことができる。但し、相続財産について特別担保を有する者は、この限りでない。

第九百三十六条 相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 管理人は、相続人のために、これに代わつて、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な一切の行為をする。
3 第九百二十六条乃至前条の規定は、管理人にこれを準用する。但し、第九百二十七条第一項に定める公告をする期間は、管理人の選任があつた後十日以内とする。

第九百三十七条 限定承認をした共同相続人の一人又は数人について第九百二十一条第一号又は第三号に掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産を以て弁済を受けることができなかつた債権額について、その者に対し、その相続分に応じて権利を行うことができる。

第三節 放棄

第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初から相続人とならなかつたものとみなす。

第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄によつて相続人となつた者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意を以て、その財産の管理を継続しなければならない。
2 第六百四十五条、第六百四十六条、第六百五十条第一項、第二項及び第九百十八条第二項、第三項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第五章 財産の分離

第九百四十一条 相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後でも、同様である。
2 家庭裁判所が前項の請求によつて財産の分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があつたこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。

第九百四十二条 財産分離の請求をした者及び前条第二項の規定によつて配当加入の申出をした者は、相続財産について、相続人の債権者に先だつて弁済を受ける。

第九百四十三条 財産分離の請求があつたときは、家庭裁判所は、相続財産の管理について必要な処分を命ずることができる。
2 家庭裁判所が管理人を選任した場合には、第二十七条乃至第二十九条の規定を準用する。

第九百四十四条 相続人は、単純承認をした後でも、財産分離の請求があつたときは、以後、その固有財産におけると同一の注意を以て、相続財産の管理をしなければならない。但し、家庭裁判所が管理人を選任したときは、この限りでない。
2 第六百四十五条乃至第六百四十七条及び第六百五十条第一項、第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第九百四十五条 財産の分離は、不動産については、その登記をしなければ、これを第三者に対抗することができない。

第九百四十六条 第三百四条の規定は、財産分離の場合にこれを準用する。

第九百四十七条 相続人は、第九百四十一条第一項及び第二項の期間の満了前には、相続債権者及び受遺者に対して弁済を拒むことができる。
2 財産分離の請求があつたときは、相続人は、第九百四十一条第二項の期間の満了後に、相続財産を以て、財産分離の請求又は配当加入の申出をした債権者及び受遺者に、各々その債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。但し、優先権を有する債権者の権利を害することができない。
3 第九百三十条乃至第九百三十四条の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第九百四十八条 財産分離の請求をした者及び配当加入の申出をした者は、相続財産を以て全部の弁済を受けることができなかつた場合に限り、相続人の固有財産についてその権利を行うことができる。この場合には、相続人の債権者は、その者に先だつて弁済を受けることができる。

第九百四十九条 相続人は、その固有財産を以て相続債権者若しくは受遺者に弁済をし、又はこれに相当の担保を供して、財産分離の請求を防止し、又はその効力を消滅させることができる。但し、相続人の債権者が、これによつて損害を受けるべきことを証明して、異議を述べたときは、この限りでない。

第九百五十条 相続人が限定承認をすることができる間又は相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その債権者は、家庭裁判所に対して財産分離の請求をすることができる。
2 第三百四条、第九百二十五条、第九百二十七条乃至第九百三十四条、第九百四十三条乃至第九百四十五条及び第九百四十八条の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、第九百二十七条に定める公告及び催告は、財産分離の請求をした債権者がこれをしなければならない。

第六章 相続人の不存在

第九百五十一条 相続人のあることが明かでないときは、相続財産は、これを法人とする。

第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によつて、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 家庭裁判所は、遅滞なく管理人の選任を公告しなければならない。

第九百五十三条 第二十七条乃至第二十九条の規定は、相続財産の管理人にこれを準用する。

第九百五十四条 管理人は、相続債権者又は受遺者の請求があるときは、これに相続財産の状況を報告しなければならない。

第九百五十五条 相続人のあることが明かになつたときは、法人は、存立しなかつたものとみなす。但し、管理人がその権限内でした行為の効力を妨げない。

第九百五十六条 管理人の代理権は、相続人が相続の承認をした時に消滅する。
2 前項の場合には、管理人は、遅滞なく相続人に対して管理の計算をしなければならない。

第九百五十七条 第九百五十二条第二項に定める公告があつた後二箇月以内に相続人のあることが明かにならなかつたときは、管理人は、遅滞なく一切の相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は、二箇月を下ることができない。
2 第七十九条第二項、第三項及び第九百二十八条乃至第九百三十五条の規定は、前項の場合にこれを準用する。但し、第九百三十二条但書の規定は、この限りでない。

第九百五十八条 前条第一項の期間の満了後、なお、相続人のあることが明かでないときは、家庭裁判所は、管理人又は検察官の請求によつて、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。但し、その期間は六箇月を下ることができない。

第九百五十八条の二 前条の期間内に相続人である権利を主張する者がないときは、相続人並びに管理人に知れなかつた相続債権者及び受遺者は、その権利を行うことができない。

第九百五十八条の三 前条の場合において相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があつた者の請求によつて、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内に、これをしなければならない。

第九百五十九条 前条の規定によつて処分されなかつた相続財産は、国庫に帰属する。この場合には、第九百五十六条第二項の規定を準用する。

第七章 遺言

第一節 総則

第九百六十条 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、これをすることができない。

第九百六十一条 満十五歳に達した者は、遺言をすることができる。

第九百六十二条 第四条、第九条、第十二条及び第十六条の規定は、遺言には、これを適用しない。

第九百六十三条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

第九百六十四条 遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる。但し、遺留分に関する規定に違反することができない。

第九百六十五条 第八百八十六条及び第八百九十一条の規定は、受遺者にこれを準用する。

第九百六十六条 被後見人が、後見の計算の終了前に、後見人又はその配偶者若しくは直系卑属の利益となるべき遺言をしたときは、その遺言は、無効とする。
2 前項の規定は、直系血族、配偶者又は兄弟姉妹が後見人である場合には、これを適用しない。

第二節 遺言の方式

第一款 普通の方式

第九百六十七条 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によつてこれをしなければならない。但し、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。

第九百六十八条 自筆証書によつて遺言をするには、遺言者が、その全文、日附及び氏名を自書し、これに印をおさなければならない。
2 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を附記して特にこれに署名し、且つ、その変更の場所に印をおさなければ、その効力がない。

第九百六十九条 公正証書によつて遺言をするには、次の方式に従わなければならない。
 一 証人二人以上の立会いがあること。
 二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
 三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
 四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
 五 公証人が、その証書は前四号に掲げる方式に従つて作つたものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

第九百六十九条の二 口がきけない者が公正証書によつて遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述し、又は自書して、前条第二号の口授に代えなければならない。この場合における同条第三号の規定の適用については、同号中「口述」とあるのは、「通訳人の通訳による申述」又は「自書」とする。
2 前条の遺言者又は証人が耳が聞こえない者である場合には、公証人は、同条第三号に規定する筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えて、同号の読み聞かせに代えることができる。
3 公証人は、前二項に定める方式に従つて公正証書を作つたときは、その旨をその証書に付記しなければならない。

第九百七十条 秘密証書によつて遺言をするには、左の方式に従わなければならない。
 一 遺言者が、その証書に署名し、印をおすこと。
 二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章を以てこれに封印すること。
 三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
 四 公証人が、その証書を提出した日附及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印をおすこと。
2 第九百六十八条第二項の規定は、秘密証書による遺言にこれを準用する。

第九百七十一条 秘密証書による遺言は、前条に定める方式に欠けるものがあつても、第九百六十八条の方式を具備しているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有する。

第九百七十二条 口がきけない者が秘密証書によつて遺言をする場合には、遺言者は、公証人及び証人の前で、その証書は自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を通訳人の通訳により申述し、又は封紙に自書して、第九百七十条第一項第三号の申述に代えなければならない。
2 前項の場合において、遺言者が通訳人の通訳により申述したときは、公証人は、その旨を封紙に記載しなければならない。
3 第一項の場合において、遺言者が封紙に自書したときは、公証人は、その旨を封紙に記載して、第九百七十条第一項第四号に規定する申述の記載に代えなければならない。

第九百七十三条 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。
2 遺言に立ち会つた医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかつた旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならない。ただし、秘密証書によつて遺言をする場合には、その封紙に右の記載をし、署名し、印を押さなければならない。

第九百七十四条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
 一 未成年者
 二 推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族
 三 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び雇人

第九百七十五条 遺言は、二人以上の者が同一の証書でこれをすることができない。

第二款 特別の方式

第九百七十六条 疾病その他の事由によつて死亡の危急に迫つた者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもつて、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合には、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2 口がきけない者が前項の規定によつて遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4 前三項の規定によつてした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。
5 家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。

第九百七十七条 伝染病のため行政処分によつて交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会を以て遺言書を作ることができる。

第九百七十八条 船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会を以て遺言書を作ることができる。

第九百七十九条 船舶遭難の場合において、船舶中に在つて死亡の危急に迫つた者は、証人二人以上の立会を以て口頭で遺言をすることができる。
2 口がきけない者が前項の規定によつて遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
3 前二項の規定に従つてした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力がない。
4 第九百七十六条第五項の規定は、前項の場合について準用する。

第九百八十条 第九百七十七条及び第九百七十八条の場合には、遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印をおさなければならない。

第九百八十一条 第九百七十七条乃至第九百七十九条の場合において、署名又は印をおすことのできない者があるときは、立会人又は証人は、その事由を附記しなければならない。

第九百八十二条 第九百六十八条第二項及び第九百七十三条乃至第九百七十五条の規定は、第九百七十六条乃至前条の規定による遺言にこれを準用する。

第九百八十三条 第九百七十六条乃至前条の規定によつてした遺言は、遺言者が普通の方式によつて遺言をすることができるようになつた時から六箇月間生存するときは、その効力がない。

第九百八十四条 日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によつて遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事がこれを行う。

第三節 遺言の効力

第九百八十五条 遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。
2 遺言に停止条件を附した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したときは、遺言は、条件が成就した時からその効力を生ずる。

第九百八十六条 受遺者は、遺言者の死亡後、何時でも、遺贈の放棄をすることができる。
2 遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時にさかのぼつてその効力を生ずる。

第九百八十七条 遺贈義務者その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に遺贈の承認又は放棄をすべき旨を受遺者に催告することができる。若し、受遺者がその期間内に遺贈義務者に対してその意思を表示しないときは、遺贈を承認したものとみなす。

第九百八十八条 受遺者が遺贈の承認又は放棄をしないで死亡したときは、その相続人は、自己の相続権の範囲内で、承認又は放棄をすることができる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第九百八十九条 遺贈の承認及び放棄は、これを取り消すことができない。
2 第九百十九条第二項の規定は、遺贈の承認及び放棄にこれを準用する。

第九百九十条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

第九百九十一条 受遺者は、遺贈が弁済期に至らない間は、遺贈義務者に対して相当の担保を請求することができる。停止条件附の遺贈についてその条件の成否が未定である間も、同様である。

第九百九十二条 受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を取得する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第九百九十三条 遺贈義務者が遺言者の死亡後に遺贈の目的物について費用を出したときは、第二百九十九条の規定を準用する。
2 果実を収取するために出した通常の必要費は、果実の価格を超えない限度で、その償還を請求することができる。

第九百九十四条 遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。
2 停止条件附の遺贈については、受遺者がその条件の成就前に死亡したときも、前項と同様である。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第九百九十五条 遺贈が、その効力を生じないとき、又は放棄によつてその効力がなくなつたときは、受遺者が受けるべきであつたものは、相続人に帰属する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第九百九十六条 遺贈は、その目的たる権利が遺言者の死亡の時において相続財産に属しなかつたときは、その効力を生じない。但し、その権利が相続財産に属すると属しないとにかかわらず、これを遺贈の目的としたものと認むべきときは、この限りでない。

第九百九十七条 相続財産に属しない権利を目的とする遺贈が前条但書の規定によつて有効であるときは、遺贈義務者は、その権利を取得してこれを受遺者に移転する義務を負う。若し、これを取得することができないか、又はこれを取得するについて過分の費用を要するときは、その価額を弁償しなければならない。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第九百九十八条 不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者が追奪を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じく、担保の責に任ずる。
2 前項の場合において、物に瑕疵があつたときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物を以てこれに代えなければならない。

第九百九十九条 遺言者が、遺贈の目的物の滅失若しくは変造又はその占有の喪失によつて第三者に対して償金を請求する権利を有するときは、その権利を遺贈の目的としたものと推定する。
2 遺贈の目的物が、他の物と附合し、又は混和した場合において、遺言者が第二百四十三条乃至第二百四十五条の規定によつて合成物又は混和物の単独所有者又は共有者となつたときは、その全部の所有権又は共有権を遺贈の目的としたものと推定する。

第千条 遺贈の目的たる物又は権利が遺言者の死亡の時において第三者の権利の目的であるときは、受遺者は、遺贈義務者に対しその権利を消滅させるべき旨を請求することができない。但し、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

第千一条 債権を遺贈の目的とした場合において、遺言者が弁済を受け、且つ、その受け取つた物が、なお、相続財産中に在るときは、その物を遺贈の目的としたものと推定する。
2 金銭を目的とする債権については、相続財産中にその債権額に相当する金銭がないときでも、その金額を遺贈の目的としたものと推定する。

第千二条 負担附遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責に任ずる。
2 受遺者が遺贈の放棄をしたときは、負担の利益を受けるべき者が、自ら受遺者となることができる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第千三条 負担附遺贈の目的の価額が相続の限定承認又は遺留分回復の訴によつて減少したときは、受遺者は、その減少の割合に応じてその負担した義務を免かれる。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第四節 遺言の執行

第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知つた後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様である。
2 前項の規定は、公正証書による遺言には、これを適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会を以てしなければ、これを開封することができない。

第千五条 前条の規定によつて遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処せられる。

第千六条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

第千七条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。

第千八条 相続人その他の利害関係人は、相当の期間を定め、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨を遺言執行者に催告することができる。若し、遺言執行者が、その期間内に、相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。

第千九条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

第千十条 遺言執行者が、ないとき、又はなくなつたときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によつて、これを選任することができる。

第千十一条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を調製して、これを相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会を以て財産目録を調製し、又は公証人にこれを調製させなければならない。

第千十二条 遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 第六百四十四条乃至第六百四十七条及び第六百五十条の規定は、遺言執行者にこれを準用する。

第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。

第千十四条 前三条の規定は、遺言が特定財産に関する場合には、その財産についてのみこれを適用する。

第千十五条 遺言執行者は、これを相続人の代理人とみなす。

第千十六条 遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。但し、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2 遺言執行者が前項但書の規定によつて第三者にその任務を行わせる場合には、相続人に対して、第百五条に定める責任を負う。

第千十七条 数人の遺言執行者がある場合には、その任務の執行は、過半数でこれを決する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
2 各遺言執行者は、前項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。

第千十八条 家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によつて遺言執行者の報酬を定めることができる。但し、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りでない。
2 遺言執行者が報酬を受けるべき場合には、第六百四十八条第二項及び第三項の規定を準用する。

第千十九条 遺言執行者がその任務を怠つたときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

第千二十条 第六百五十四条及び第六百五十五条の規定は、遺言執行者の任務が終了した場合にこれを準用する。

第千二十一条 遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担とする。但し、これによつて遺留分を減ずることができない。

第五節 遺言の取消

第千二十二条 遺言者は、何時でも、遺言の方式に従つて、その遺言の全部又は一部を取り消すことができる。

第千二十三条 前の遺言と後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を取り消したものとみなす。
2 前項の規定は、遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合にこれを準用する。

第千二十四条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を取り消したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様である。

第千二十五条 前三条の規定によつて取り消された遺言は、その取消の行為が、取り消され、又は効力を生じなくなるに至つたときでも、その効力を回復しない。但し、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。

第千二十六条 遺言者は、その遺言の取消権を放棄することができない。

第千二十七条 負担附遺贈を受けた者がその負担した義務を履行しないときは、相続人は、相当の期間を定めてその履行を催告し、若し、その期間内に履行がないときは、遺言の取消を家庭裁判所に請求することができる。

第八章 遺留分

第千二十八条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、左の額を受ける。
 一 直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の三分の一
 二 その他の場合には、被相続人の財産の二分の一

第千二十九条 遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して、これを算定する。
2 条件附の権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選定した鑑定人の評価に従つて、その価格を定める。

第千三十条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によつてその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知つて贈与をしたときは、一年前にしたものでも、同様である。

第千三十一条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するに必要な限度で、遺贈及び前条に掲げる贈与の減殺を請求することができる。

第千三十二条 条件附の権利又は存続期間の不確定な権利を贈与又は遺贈の目的とした場合において、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第千二十九条第二項の規定によつて定めた価格に従い、直ちにその残部の価額を受贈者又は受遺者に給付しなければならない。

第千三十三条 贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、これを減殺することができない。

第千三十四条 遺贈は、その目的の価額の割合に応じてこれを減殺する。但し、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

第千三十五条 贈与の減殺は、後の贈与から始め、順次に前の贈与に及ぶ。

第千三十六条 受贈者は、その返還すべき財産の外、なお、減殺の請求があつた日以後の果実を返還しなければならない。

第千三十七条 減殺を受けるべき受贈者の無資力によつて生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。

第千三十八条 負担附贈与は、その目的の価額の中から負担の価額を控除したものについて、その減殺を請求することができる。

第千三十九条 不相当な対価を以てした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知つてしたものに限り、これを贈与とみなす。この場合において、遺留分権利者がその減殺を請求するときは、その対価を償還しなければならない。

第千四十条 減殺を受けるべき受贈者が贈与の目的を他人に譲り渡したときは、遺留分権利者にその価額を弁償しなければならない。但し、譲受人が譲渡の当時遺留分権利者に損害を加えることを知つたときは、遺留分権利者は、これに対しても減殺を請求することができる。
2 前項の規定は、受贈者が贈与の目的の上に権利を設定した場合にこれを準用する。

第千四十一条 受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免かれることができる。
2 前項の規定は、前条第一項但書の場合にこれを準用する。

第千四十二条 減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があつたことを知つた時から、一年間これを行わないときは、時効によつて消滅する。相続の開始の時から十年を経過したときも、同様である。

第千四十三条 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

第千四十四条 第八百八十七条第二項、第三項、第九百条、第九百一条、第九百三条及び第九百四条の規定は、遺留分にこれを準用する。

   附 則 [昭和22年12月22日法律第222号]

第一条 この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。

第二条 明治三十五年法律第三十七号は、これを廃止する。

第三条 この附則で、新法とは、この法律による改正後の民法をいい、旧法とは、従前の民法をいい、応急措置法とは、昭和二十二年法律第七十四号をいう。

第四条 新法は、別段の規定のある場合を除いては、新法施行前に生じた事項にもこれを適用する。但し、旧法及び応急措置法によつて生じた効力を妨げない。

第五条 応急措置法施行前に妻が旧法第十四条第一項の規定に違反してした行為は、これを取り消すことができない。

第六条 応急措置法施行前にした隠居が旧法によつて取り消すことができる場合には、なお、旧法によつてこれを取り消すことができる。この場合には、旧法第七百六十条の規定を適用する。

第七条 応急措置法施行前に隠居又は入夫婚姻による戸主権の喪失があつた場合には、なお、旧法第七百六十一条の規定を適用する。

第八条 新法施行前にした婚姻が旧法によつて取り消すことができる場合でも、その取消の原因である事項が新法に定めていないときは、その婚姻は、これを取り消すことができない。

第九条 新法第七百六十四条において準用する新法第七百四十七条第二項の期間は、当事者が、新法施行前に、詐欺を発見し、又は強迫を免かれた場合には、新法施行の日から、これを起算する。

第十条 日本国憲法施行後新法施行前に離婚した者の一方は、新法第七百六十八条の規定に従い相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定は、婚姻の取消についてこれを準用する。

第十一条 新法施行前に生じた事実を原因とする離婚の請求については、なお、従前の例による。
2 新法第七百七十条第二項の規定は、前項の場合にこれを準用する。

第十二条 応急措置法施行前に未成年の子が旧法第七百三十七条又は第七百三十八条の規定によつて父又は母の家に入つた場合には、その子は、成年に達した時から一年以内に従前の氏に復することができる。その子が新法施行前に成年に達した場合において、新法施行後一年以内も、同様である。

第十三条 第八条、第九条及び第十一条の規定は、養子縁組についてこれを準用する。

第十四条 新法施行の際、現に、婚姻中でない父母が、共同して未成年の子に対して親権を行つている場合には、新法施行後も、引き続き共同して親権を行う。但し、父母は、協議でその一方を親権者と定めることができる。
2 前項但書の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事審判所は、父又は母の請求によつて協議に代わる審判をすることができる。
3 新法第八百十九条第六項の規定は、第一項但書又は前項の規定によつて親権者が定められた場合にこれを準用する。

第十五条 応急措置法施行前に、親権を行う母が、旧法第八百八十六条の規定に違反してし、又は同意を与えた行為は、これを取り消すことができない。

第十六条 第二十一条の規定は、応急措置法施行前に親権を行つていた継父、継母又は嫡母についてこれを準用する。

第十七条 新法施行前に親族会員と親権に服した子との間に財産の管理について生じた債権については、なお、旧法第八百九十四条の規定を適用する。

第十八条 新法施行前に母が旧法の規定によつて子の財産の管理を辞した場合において、新法施行の際その子のためにまだ後見が開始していないときは、その辞任は、新法施行後は、その効力を有しない。

第十九条 新法施行の際現に旧法第九百二条の規定によつて父母の一方が後見人であるとき、又は旧法第九百四条の規定によつて選任された後見人があるときは、その後見人は、新法施行のため、当然にはその地位を失うことはない。但し、新法施行によつて後見が終了し、又は新法による法定後見人があるときは、当然その地位を失う。

第二十条 前条の規定は、後見監督人及び保佐人についてこれを準用する。

第二十一条 新法施行前に、後見人が、旧法第九百二十九条の規定に違反してし、又は同意を与えた行為は、なお、旧法によつてこれを取り消すことができる。

第二十二条 第十七条の規定は、親族会員と被後見人又は準禁治産との間にこれを準用する。

第二十三条 新法施行前にされた親族会の決議に対する不服については、なお、旧法を適用する。
2 前項の規定によつて親族会の決議を取り消す判決が確定した場合でも、親族会であらたに決議をすることは、これを認めない。

第二十四条 新法施行前に扶養に関してされた判決については、新法第八百八十条の規定を準用する。

第二十五条 応急措置法施行前に開始した相続に関しては、第二項の場合を除いて、なお、旧法を適用する。
2 応急措置法施行前に家督相続が開始し、新法施行後に旧法によれば家督相続人を選定しなければならない場合には、その相続に関しては、新法を適用する。但し、その相続の開始が入夫婚姻の取消、入夫の離婚又は養子縁組の取消によるときは、その相続は、財産の相続に関しては開始しなかつたものとみなし、第二十八条の規定を準用する。

第二十六条 応急措置法施行の際における戸主が婚姻又は養子縁組によつて他家から入つた者である場合には、その家の家附の継子は、新法施行後に開始する相続に関しては、嫡出である子と同一の権利義務を有する。
2 前項の戸主であつた者について応急措置法施行後新法施行前に相続が開始した場合には、前項の継子は、相続人に対して相続財産の一部の分配を請求することができる。この場合には、第二十七条第二項及び第三項の規定を準用する。
3 前二項の規定は、第一項の戸主であつた者が応急措置法施行後に婚姻の取消若しくは離婚又は縁組の取消若しくは離縁によつて氏を改めた場合には、これを適用しない。

第二十七条 第二十五条第二項本文の場合を除いて、日本国憲法公布の日以後に戸主の死亡による家督相続が開始した場合には、新法によれば共同相続人となるはずであつた者は、家督相続人に対して相続財産の一部の分配を請求することができる。
2 前項の規定による相続財産の分配について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家事審判所に対し協議に代わる処分を請求することができる。但し、新法施行の日から一年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家事審判所は、相続財産の状態、分配を受ける者の員数及び資力、被相続人の生前行為又は遺言によつて財産の分配を受けたかどうかその他一切の事情を考慮して、分配をさせるべきかどうか並びに分配の額及び方法を定める。

第二十八条 応急措置法施行の際戸主であつた者が応急措置法施行後に婚姻の取消若しくは離婚又は養子縁組の取消若しくは離縁によつて氏を改めた場合には、配偶者又は養親、若し配偶者又は養親がないときは新法によるその相続人は、その者に対し財産の一部の分配を請求することができるこの場合には、前条第二項及び第三項の規定を準用する。

第二十九条 推定の家督相続人又は遺産相続人が旧法第九百七十五条第一項第一号又は第九百九十八条の規定によつて廃除されたときは、新法の適用については、新法第八百九十二条の規定によつて廃除されたものとみなす。

第三十条 旧法第九百七十八条(旧法第千条において準用する場合を含む。)の規定によつて遺産の管理についてした処分は、相続が第二十五条第二項本文の規定によつて新法の適用を受ける場合には、これを新法第八百九十五条の規定によつてした処分とみなす。

第三十一条 応急措置法施行前に分家又は廃絶家再興のため贈与された財産は、新法第九百三条の規定の適用については、これを生計の資本として贈与された財産とみなす。

第三十二条 新法第九百六条及び第九百七条の規定は、第二十五条第一項の規定によつて遺産相続に関し旧法を適用する場合にこれを準用する。

第三十三条 新法施行前に旧法第千七十九条第一項の規定に従つてした遺言で、同条第二項の規定による確認を得ないものについては、新法第九百七十九条第二項及び第三項の規定を準用する。
2 新法施行前に海軍所属の艦船遭難の場合に旧法第千八十一条において準用する旧法第千七十九条第一項の規定に従つてした遺言で、同条第二項の規定による確認を得ないものについても、前項と同様である。

   附 則 [昭和37年3月29日法律第40号] [抄]

(施行期日)
1 この法律は、昭和三十七年七月一日から施行する。
2 この法律による改正後の民法は、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、従前の民法によつて生じた効力を妨げない。

   附 則 [昭和41年7月1日法律第111号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。

[第二条 以下省略]

   附 則 [昭和46年6月3日法律第99号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、昭和四十七年四月一日から施行する。

   附 則 [昭和51年6月15日法律第66号] [抄]

(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。
[第2項以下省略]

   附 則 [昭和54年3月30日法律第5号] [抄]

(施行期日)
1 この法律は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の施行の日(昭和五十五年十月一日)から施行する。
(経過措置)
2 この法律施行前に申し立てられた民事執行、企業担保権の実行及び破産の事件については、なお従前の例による。
[第3項以下省略]

   附 則 [昭和54年12月20日法律第68号] [抄]

第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を経過した日から施行する。

[第二条 以下省略]

   附 則 [昭和55年5月17日法律第51号] [抄]

(施行期日)
1 この法律は、昭和五十六年一月一日から施行する。
[2項以下省略]

   附 則 [昭和62年9月26日法律第101号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、昭和六十三年一月一日から施行する。

[第二条以下省略]

   附 則 [平成元年6月28日法律第27号] [抄]

(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
[第2項以下省略]

   附 則 [平成元年12月22日法律第91号] [抄]

1 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
[第2項以下省略]

   附 則 [平成2年6月29日法律第64号] [抄]

1 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
[第2項以下省略]

   附 則 [平成3年5月21日法律第79号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
 一 [第1号から第4号まで 省略]
 五 第六条 [中略] の規定 公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日

   附 則 [平成8年6月26日法律第110号] [抄]

 この法律は、新民訴法の施行の日から施行する。[後略]

   附 則 [平成11年7月16日法律第87号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、平成十二年四月一日から施行する。[後略]

   附 則 [平成11年12月8日法律第149号]

(施行期日)
第一条 この法律は、平成十二年四月一日から施行する。ただし、第九百六十九条、第九百七十二条、第九百七十六条及び第九百七十九条の改正規定、第九百六十九条の次に一条を加える改正規定並びに次条の規定は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。

(民法の一部改正に伴う経過措置の原則)
第二条 この法律による改正後の民法(次条において「新法」という。)の規定は、次条第三項の規定による場合を除き、当該改正規定の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、改正前の民法(次条において「旧法」という。)の規定によつて生じた効力を妨げない。

(禁治産及び準禁治産の宣告等に関する経過措置)
第三条 旧法の規定による禁治産の宣告は新法の規定による後見開始の審判と、当該禁治産の宣告を受けた禁治産者並びにその後見人及び後見監督人は当該後見開始の審判を受けた成年被後見人並びにその成年後見人及び成年後見監督人とみなす。
2 旧法の規定による心神耗弱を原因とする準禁治産の宣告は新法の規定による保佐開始の審判と、当該準禁治産の宣告を受けた準禁治産者及びその保佐人は当該保佐開始の審判を受けた被保佐人及びその保佐人とみなす。
3 前項に規定する準禁治産者以外の準禁治産者及びその保佐人に関する民法の規定の適用については、第八百四十六条、第九百七十四条及び第千九条の改正規定を除き、なお従前の例による。
4 旧法の規定による禁治産又は準禁治産の宣告の請求(この法律の施行前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、新法の規定による後見開始又は保佐開始の審判の請求とみなす。

   附 則 [平成11年12月22日法律第225号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(民法等の一部改正に伴う経過措置)
第二十五条 この法律の施行前に和議開始の申立てがあった場合又は当該申立てに基づきこの法律の施行前若しくは施行後に和議開始の決定があった場合においては、当該申立て又は決定に係る次の各号に掲げる法律の規定に定める事項に関する取扱いについては、この法律の附則の規定による改正後のこれらの規定にかかわらず、なお従前の例による。[後略]

   附 則 [平成12年5月31日法律第91号] [抄]

(施行期日)
1 この法律は、商法等の一部を改正する法律(平成十二年法律第九十号)の施行の日から施行する。

   附 則 [平成13年6月8日法律第41号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、平成十四年四月一日から施行する。

   附 則 [平成15年7月16日法律第109号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(民法の一部改正に伴う経過措置)
第十三条 前条の規定の施行前にされた婚姻の取消し及び養子縁組の取消しの請求については、なお従前の例による。

   附 則 [平成15年8月1日法律第134号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(雇用関係の先取特権に関する経過措置)
第二条 第一条の規定による改正後の民法第三百六条第二号及び第三百八条の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後に同号に掲げる原因により生じた債権及び同条の雇用関係に基づいて生じた債権に係る先取特権について適用し、施行日前に第一条の規定による改正前の民法(以下「旧民法」という。)第三百六条第二号に掲げる原因により生じた債権及び旧民法第三百八条の雇人給料(債務者の雇人が受けるべき最後の六箇月間の給料に限る。)として生じた債権に係る先取特権については、なお従前の例による。

(債権質の効力の発生に関する経過措置)
第三条 施行日前に債権をもってその目的とする質権の設定をする契約をした場合における当該質権の効力の発生については、第一条の規定による改正後の民法第三百六十三条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(滌除及び増価競売に関する経過措置)
第四条 施行日前に旧民法第三百八十三条の書面が同条に規定する債権者の全員に到達した場合における当該抵当不動産についての旧民法第三百七十八条の規定による滌除及び旧民法第三百八十四条に規定する増価競売については、第一条の規定による改正後の民法及び第三条の規定による改正後の民事執行法の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(短期賃貸借に関する経過措置)
第五条 この法律の施行の際現に存する抵当不動産の賃貸借(この法律の施行後に更新されたものを含む。)のうち民法第六百二条に定める期間を超えないものであって当該抵当不動産の抵当権の登記後に対抗要件を備えたものに対する抵当権の効力については、なお従前の例による。

(根抵当権の元本の確定に関する経過措置)
第六条 施行日前に旧民法第三百九十八条ノ二十第一項第一号に掲げる場合に該当して同項の規定により確定した根抵当権の担保すべき元本については、なお従前の例による。

(敷金の登記に関する経過措置)
第七条 第二条の規定による改正後の不動産登記法第百三十二条第一項の規定は、施行日前に登記された賃貸借の敷金については、適用しない。

   附 則 [平成15年8月1日法律第138号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

   附 則 [平成16年6月2日法律第76号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、破産法(平成十六年法律第七十五号。次条第八項並びに附則第三条第八項、第五条第八項、第十六項及び第二十一項、第八条第三項並びに第十三条において「新破産法」という。)の施行の日から施行する。[後略]

(民法の一部改正に伴う経過措置)
第七条 施行日前にされた破産の申立て又は施行日前に職権でされた破産の宣告に係る破産事件については、第六条の規定による改正後の民法第二百七十六条、第六百二十一条及び第六百四十二条第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(罰則の適用等に関する経過措置)
第十二条 施行日前にした行為並びに附則第二条第一項、第三条第一項、第四条、第五条第一項、第九項、第十七項、第十九項及び第二十一項並びに第六条第一項及び第三項の規定によりなお従前の例によることとされる場合における施行日以後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。この場合において、旧民事再生法第二百四十六条及び第二百四十七条の規定の適用については第一号に掲げる再生手続開始の決定は同号に定める再生手続開始の決定と、旧会社更生法第二百五十五条及び第二百五十六条の規定の適用については第二号に掲げる更生手続開始の決定は同号に定める更生手続開始の決定と、旧更生特例法第五百三十九条及び第五百四十条の規定の適用については第三号に掲げる更生手続開始の決定は同号に定める更生手続開始の決定と、それぞれみなす。
 一 新民事再生法の規定によりされた再生手続開始の決定 旧民事再生法の規定によりされた再生手続開始の決定
 二 新会社更生法の規定によりされた更生手続開始の決定 旧会社更生法の規定によりされた更生手続開始の決定
 三 新更生特例法第三十一条又は第百九十六条において準用する新会社更生法第四十一条第一項に規定する更生手続開始の決定 旧更生特例法第三十一条又は第百九十六条において準用する旧会社更生法第四十一条第一項に規定する更生手続開始の決定
2 次の各号に掲げる場合における施行日前にした行為に対する旧破産法第三百七十四条から第三百七十六条まで及び第三百七十八条の規定の適用については、当該各号に定める破産手続開始の決定は、旧破産法の規定によりされた破産の宣告とみなす。
 一 附則第二条第三項の規定により新民事再生法第二百五十条の規定が適用される場合 新民事再生法第二百五十条の規定によりされた破産手続開始の決定
 二 附則第三条第三項の規定により新会社更生法第二百五十二条の規定が適用される場合 新会社更生法第二百五十二条の規定によりされた破産手続開始の決定
 三 附則第五条第三項又は第十一項の規定により新更生特例法第百五十八条の八又は第三百三十一条の八の規定が適用される場合 新更生特例法第百五十八条の八又は第三百三十一条の八の規定によりされた破産手続開始の決定
3 施行日前に破産の宣告、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定、整理開始の命令、特別清算開始の命令又は外国倒産処理手続の承認の決定(以下この項において「手続開始決定」という。)を受けた者(当該手続開始決定に係る破産手続、再生手続、更生手続、整理手続、特別清算手続又は承認援助手続が終了している者を除く。)が有する第百二十条の規定による改正前の債権管理回収業に関する特別措置法第二条第一項第十六号に規定する金銭債権は、第百二十条の規定による改正後の債権管理回収業に関する特別措置法の規定及び当該規定に係る罰則の適用については、同法第二条第一項第十六号に規定する金銭債権とみなす。
4 施行日前にされた破産、再生手続開始又は更生手続開始の申立てに係る届出の義務に関するこの法律による改正前の証券取引法、外国証券業者に関する法律及び信託業法の規定並びにこれらの規定に係る罰則の適用については、なお従前の例による。
5 施行日前にされた破産の宣告、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定又は外国倒産処理手続の承認の決定に係る届出、通知又は報告の義務に関するこの法律による改正前の証券取引法、測量法、国際観光ホテル整備法、建築士法、投資信託及び投資法人に関する法律、電気通信事業法、電気通信役務利用放送法、水洗炭業に関する法律、不動産の鑑定評価に関する法律、外国証券業者に関する法律、積立式宅地建物販売業法、銀行法、貸金業の規制等に関する法律、浄化槽法、有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律、抵当証券業の規制等に関する法律、金融先物取引法、遊漁船業の適正化に関する法律、前払式証票の規制等に関する法律、商品投資に係る事業の規制に関する法律、不動産特定共同事業法、保険業法、資産の流動化に関する法律、債権管理回収業に関する特別措置法、新事業創出促進法、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、著作権等管理事業法、マンションの管理の適正化の推進に関する法律、確定給付企業年金法、特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律、社債等の振替に関する法律、確定拠出年金法、使用済自動車の再資源化等に関する法律、信託業法及び特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律等の一部を改正する法律附則第二条第一項の規定によりなおその効力を有するものとされる同法第一条の規定による改正前の特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律の規定並びにこれらの規定に係る罰則の適用については、なお従前の例による。

(政令への委任)
第十四条 附則第二条から前条までに規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。

   附 則 [平成16年6月18日法律第124号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、新不動産登記法の施行の日から施行する。[後略]

以上

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