金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律(廃止)


公布:平成10年2月18日法律第5号
施行:平成10年2月18日

廃止:平成10年10月16日法律第132号
施行:平成10年10月23日

改正:平成13年11月28日法律第129号
施行:平成14年4月1日
改正:平成16年6月18日法律第129号
施行:平成16年8月1日
改正:平成17年7月26日法律第第87号
施行:平成18年5月1日

目次

 第一章 総則(第一条・第二条)
 第二章 預金保険機構の業務の特例等(第三条−第十一条)
 第三章 金融危機管理審査委員会(第十二条−第二十六条)
 第四章 政府による財政上の措置等(第二十七条−第三十三条)
 第五章 預金保険機構の特例業務の終了等(第三十四条・第三十五条)
 第六章 雑則(第三十六条−第三十九条)
 第七章 罰則(第四十条・第四十一条)
 附則

第一章 総則

(目的)
第一条 この法律は、金融機関の破綻が相次いで発生している状況の下で、我が国における金融の機能に対する内外の信頼が大きく低下するとともに信用秩序の維持と国民経済の円滑な運営に重大な支障が生ずることとなることが懸念される事態にあることにかんがみ、金融機関等の自己資本の充実を図ることにより、我が国における金融の機能の安定化を図るため、緊急の特例措置として、預金保険機構に、その業務の特例として、金融機関が発行する優先株式の引受け等を行うことを協定銀行に委託し、これに伴い必要となる財務上の支援を行う業務を行わせるとともに、預金保険機構がその業務を行うために必要な国の財政上の措置等を講ずることにより、信用秩序の維持と預金者等の保護を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「金融機関等」とは、次に掲げるものをいう。
 一 預金保険法(昭和四十六年法律第三十四号)第二条第一項に規定する金融機関(以下「金融機関」という。)並びに信用金庫連合会、中小企業等協同組合法(昭和二十四年法律第百八十一号)第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会及び労働金庫連合会
 二 農林中央金庫
 三 農業協同組合法(昭和二十二年法律第百三十二号)第十条第一項第二号の事業を行う農業協同組合連合会
 四 水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)第八十七条第一項第二号の事業を行う漁業協同組合連合会
2 この法律において「優先株式」とは、その発行の時において議決権を行使することができる事項のない株式であって、利益の配当及び残余財産の分配について優先的内容を有するものをいう。
3 この法律において「劣後特約付社債」とは、元利金の支払について劣後的内容を有する特約が付された社債であって、金融機関等の自己資本の充実に資するものとして主務省令で定める社債に該当するものをいう。
4 この法律において「優先株式等」とは、優先株式、劣後特約付社債その他これらに準ずるものとして主務省令で定めるものをいう。
5 この法律において「劣後特約付金銭消費貸借」とは、元利金の支払について劣後的内容を有する特約が付された金銭の消費貸借であって、金融機関等の自己資本の充実に資するものとして主務省令で定める金銭の消費貸借に該当するものをいう。
6 この法律において「協定銀行」とは、預金保険機構が次条第一項に規定する金融機関等の自己資本充実のための業務の委託に関する協定を締結した銀行をいう。

第二章 預金保険機構の業務の特例等

(預金保険機構の業務の特例)
第三条 預金保険機構(以下「機構」という。)は、預金保険法第三十四条に規定する業務のほか、第一条の目的を達成するため、同法附則第七条第一項の規定により同項の協定を締結した銀行と、金融機関等の自己資本充実のための業務の委託に関する協定(以下「協定」という。)を締結し、及び当該協定を実施するための次の業務を行うことができる。
 一 協定銀行に対し、第七条第一項の規定による貸付け又は債務の保証を行うこと。
 二 協定銀行に対し、協定の定めによる業務の実施により生じた損失の補てんを行うこと。
 三 次条第一項第八号の規定に基づき協定銀行から納付される金銭の収納を行うこと。
 四 前三号の業務に附帯する業務を行うこと。
2 前項に規定する「金融機関等の自己資本充実のための業務」とは、次に掲げる業務をいう。
 一 金融機関等が発行する優先株式等の引受けを行うこと。
 二 金融機関等に対する劣後特約付金銭消費貸借による貸付けを行うこと。
 三 第一号の引受けにより取得をした優先株式等(当該優先株式等が優先株式又は劣後特約付社債である場合の当該取得後においては、次に掲げる株式を含む。以下「取得優先株式等」という。)の譲渡その他の処分を行うこと。
  イ 当該優先株式が他の種類の株式への転換(当該優先株式がその発行会社に取得され、その引換えに他の種類の株式が交付されることをいう。)の請求が可能とされるものである場合にあってはその請求により転換された他の種類の株式又は当該優先株式が一定の事由が生じたことを条件として転換されるものである場合にあってはその事由が生じたことにより転換された他の種類の株式及び当該優先株式又はこれらの転換された他の種類の株式について分割され又は併合された株式
  ロ 当該劣後特約付社債に新株予約権が付せられている場合にその行使により交付された株式及びこれについて分割され又は併合された株式
 四 第二号の貸付けにより取得をした貸付債権(以下「取得貸付債権」という。)の譲渡その他の処分を行うこと。
 五 前各号の業務に附帯する業務を行うこと。
3 前項に規定する金融機関等の自己資本充実のための業務のうち、同項第一号及び第二号に掲げる業務は、次の各号のいずれかに該当する場合においてのみ行うものとする。
 一 預金保険法第五十九条第一項に規定する資金援助に係る同項の合併等により自己資本の充実の状況が悪化した金融機関について、協定銀行の前項第一号又は第二号の業務による引受け又は貸付けによりその自己資本の充実の状況が改善されなければ、信用秩序の維持と地域経済の安定に大きな支障が生ずることとなる事態を生じさせるおそれがある場合
 二 経営の状況が著しく悪化している金融機関等でない金融機関等について、協定銀行の前項第一号又は第二号の業務による引受け又は貸付けによりその自己資本の充実の状況が改善されなければ、我が国における金融の機能に対する内外の信頼が大きく低下するとともに信用秩序の維持と国民経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずることとなる事態として次に掲げるいずれかの事態を生じさせるおそれがある場合
  イ 当該金融機関等が内外の金融市場において資金の調達をすることが極めて困難な状況に至ることとなる等により、我が国における金融の機能に著しい障害が生ずることとなる事態
  ロ 当該金融機関等が破綻し、それが他の金融機関等の連鎖的な破綻を発生させることとなる等により、当該金融機関等及び当該他の金融機関等が業務を行っている地域又は分野において、企業の活動や雇用の状況に甚大な影響を及ぼす等経済活動に著しい障害が生ずることとなる事態

(協定)
第四条 協定は、次に掲げる事項を含むものでなければならない。
 一 協定銀行は、協定の締結の日から平成十三年三月三十一日までの間に自己資本の充実のため優先株式等の発行又は劣後特約付金銭消費貸借による借入れ(以下この号において「優先株式等の発行等」という。)を行おうとする金融機関等(以下「発行金融機関等」という。)から、優先株式等の発行等に係る申込みを受けたときは、機構に対し、当該発行金融機関等と連名で、協定銀行が当該申込みに係る優先株式等の引受け又は劣後特約付金銭消費貸借による貸付け(以下「優先株式等の引受け等」という。)を行うことについての承認を申請し、その承認を受けること。
 二 協定銀行は、第七条第一項に規定する債務の保証の対象となる資金の借入れに関する契約の締結をしようとするときは、機構に対し、当該締結をしようとする契約の内容についての承認を申請し、その承認を受けること。
 三 協定銀行は、第一号の規定による承認を受けて優先株式等の引受け等を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
 四 協定銀行は、取得優先株式等及び取得貸付債権については、機構が第十二条に規定する金融危機管理審査委員会(以下この章において「審査委員会」という。)の議決を経て定める取得優先株式等及び取得貸付債権の譲渡その他の処分の基準に従い、できる限り早期に譲渡その他の処分を行うよう努めること。
 五 協定銀行は、取得優先株式等又は取得貸付債権について譲渡その他の処分を行おうとするときは、機構に対し、当該処分を行うことについての承認を申請し、その承認を受けること。
 六 協定銀行は、前号の規定による承認を受けて同号の取得優先株式等又は取得貸付債権について譲渡その他の処分を行ったときは、速やかに、その内容を機構に報告すること。
 七 協定銀行は、協定の定めによる業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定を設けて整理すること。
 八 協定銀行は、毎事業年度、協定の定めによる業務により生じた利益の額として政令で定めるところにより計算した額があるときは、当該利益の額に相当する金額を機構に納付すること。
 九 協定銀行は、優先株式等の引受け等を行った金融機関等の経営に不当な関与をしてはならないこと。
2 機構は、協定を締結するときは、あらかじめ審査委員会の議決を経なければならない。
3 機構は、協定を締結したときは、直ちに、その協定の内容を大蔵大臣に報告しなければならない。

(優先株式等の引受け等の承認等)
第五条 機構は、優先株式等の引受け等に係る前条第一項第一号の申請を受けたときは、速やかに、審査委員会における議決を得る手続をとらなければならない。
2 機構は、審査委員会の前項の議決が同項の申請を承認することを決するものであったときは、直ちに、大蔵大臣及び内閣総理大臣(当該申請に係る発行金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては大蔵大臣並びに内閣総理大臣及び労働大臣とし、当該発行金融機関等が第二条第一項第二号から第四号までに掲げるもの(以下「農水産業協同組合連合会等」という。)である場合にあっては大蔵大臣並びに農林水産大臣及び内閣総理大臣とする。次項及び第二十四条第三項において同じ。)の承認を求めなければならない。
3 大蔵大臣及び内閣総理大臣は、機構から前項の規定による承認の求めがあったときは、閣議にかけて、当該承認をするかどうかを決定しなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による承認をする場合において、当該承認に係る発行金融機関等が信用協同組合(一の都道府県の区域を越えない区域を地区とする信用協同組合に限る。第六項及び第二十条第一号において同じ。)であるときは、あらかじめ、当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事に協議しなければならない。
5 農林水産大臣及び内閣総理大臣は、第三項の規定による承認をする場合において、当該承認に係る発行金融機関等が農水産業協同組合連合会等(一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等に限る。)であるときは、あらかじめ、当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事に協議しなければならない。
6 機構は、協定銀行から、前条第一項第三号の規定による報告を受けたときは、直ちに、その報告の内容を大蔵大臣及び内閣総理大臣(同号の優先株式等の引受け等に係る金融機関等が信用協同組合である場合にあっては大蔵大臣並びに内閣総理大臣及び当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等が労働金庫又は労働金庫連合会である場合にあっては大蔵大臣並びに内閣総理大臣及び労働大臣とし、当該金融機関等が一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等である場合にあっては大蔵大臣並びに農林水産大臣、内閣総理大臣及び当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事とし、当該金融機関等がその他の農水産業協同組合連合会等である場合にあっては大蔵大臣並びに農林水産大臣及び内閣総理大臣とする。次条第二項において同じ。)に報告しなければならない。

(取得優先株式等の処分の承認等)
第六条 機構は、第四条第一項第五号に規定する処分に係る同号の申請の承認をするときは、あらかじめ審査委員会の議決を経なければならない。ただし、当該申請に係る処分が、機構の同項第四号に規定する処分の基準において審査委員会の議決を経ることを要しないものとされた処分に該当するものであるときは、この限りでない。
2 機構は、協定銀行から、第四条第一項第六号の規定による報告を受けたときは、直ちに、その報告の内容を大蔵大臣及び内閣総理大臣に報告しなければならない。

(資金の貸付け及び債務の保証)
第七条 機構は、協定銀行から、協定の定めによる優先株式等の引受け等のために必要とする資金その他の協定の定めによる業務の円滑な実施のために必要とする資金について、その資金の貸付け又は協定銀行によるその資金の借入れに係る債務の保証の申込みを受けた場合において、必要があると認めるときは、審査委員会の議決を経て、当該貸付け又は債務の保証を行うことができる。
2 機構は、前項の規定により協定銀行との間で同項の貸付け又は債務の保証に係る契約を締結したときは、直ちに、その契約の内容を大蔵大臣に報告しなければならない。

(損失の補てん)
第八条 機構は、協定銀行に対し、協定の定めによる業務の実施により協定銀行に生じた損失の額として政令で定めるところにより計算した金額の範囲内において、当該損失の補てんを行うことができる。

(報告の徴求)
第九条 機構は、第三条第一項の規定による機構の業務(以下「金融危機管理業務」という。)を行うため必要があるときは、協定銀行に対し、協定の実施又は財務の状況に関し報告を求めることができる。

(区分経理)
第十条 機構は、金融危機管理業務に係る経理については、その他の経理と区分し、特別の勘定(以下「金融危機管理勘定」という。)を設けて整理しなければならない。

(借入金及び預金保険機構債)
第十一条 機構は、金融危機管理業務を行うため必要があると認めるときは、政令で定める金額の範囲内において、大蔵大臣の認可を受けて、日本銀行若しくは金融機関等から資金の借入れ(借換えを含む。)をし、又は預金保険機構債(以下この条及び第二十七条において「機構債」という。)の発行(機構債の借換えのための発行を含む。)をすることができる。この場合において、機構は、機構債の債券を発行することができる。
2 日本銀行は、日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第四十三条第一項の規定にかかわらず、機構に対し、前項の資金の貸付けをすることができる。
3 農林中央金庫は、農林中央金庫法(大正十二年法律第四十二号)第十六条の規定にかかわらず、機構に対し、第一項の資金の貸付けをすることができる。
4 第一項の規定により発行される機構債については、これを預金保険法第四十二条第三項の規定により発行される機構債とみなして、同条第四項から第八項までの規定を適用する。

第三章 金融危機管理審査委員会

(金融危機管理審査委員会の設置)
第十二条 機構に、金融危機管理審査委員会(以下「審査委員会」という。)を置く。

(審査委員会の権限)
第十三条 預金保険法第十五条の規定にかかわらず、この法律で別に定めるもののほか、次に掲げる事項(この法律の規定による機構の業務に係るものに限る。)は、審査委員会の議決を経なければならない。
 一 定款の変更
 二 業務方法書の作成及び変更
 三 予算及び資金計画
 四 決算
 五 その他審査委員会が特に必要と認める事項

(審査委員会の組織)
第十四条 審査委員会は、委員七人で組織する。
2 委員は、審議委員三人のほか、大蔵大臣、金融監督庁長官、日本銀行総裁及び機構の理事長をもってこれに充てる。この場合において、各委員は、それぞれ独立して委員の職務を執行する。
3 審査委員会に委員長一人を置き、審議委員のうちから、審議委員の互選によってこれを定める。
4 委員長は、審査委員会の会務を総理する。
5 審査委員会は、あらかじめ、審議委員のうちから、委員長に事故がある場合に委員長の職務を代理する者を定めておかなければならない。
6 審査委員会に、経済又は金融の情勢等に関する情報の収集及び分析を行うため専門委員を置くことができる。
7 機構に、審査委員会事務局を置く。

(審議委員の任命)
第十五条 審議委員は、経済又は金融に関して優れた識見と経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。
2 審議委員の任期が満了し、又は欠員が生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣は、前項の規定にかかわらず、審議委員を任命することができる。
3 前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認が得られないときは、内閣は、直ちに、その審議委員を解任しなければならない。

(審議委員の任期)
第十六条 審議委員の任期は、三年とする。ただし、審議委員が欠員となった場合における補欠の審議委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 審議委員は、再任されることができる。

(審議委員の解任)
第十七条 内閣は、審議委員が禁治産、準禁治産若しくは破産の宣告を受け、又は禁錮以上の刑に処せられたときは、その審議委員を解任しなければならない。
2 内閣は、審議委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は審議委員に職務上の義務違反その他審議委員たるに適しない非行があると認めるときは、両議院の同意を得て、その審議委員を解任することができる。

(審議委員の報酬)
第十八条 審議委員は、報酬を受けない。ただし、旅費その他職務の遂行に伴う実費を受けるものとする。

(定足数及び議決の方法)
第十九条 審査委員会は、委員長(委員長に事故があるときは、第十四条第五項に規定する委員長の職務を代理する者。第三項及び第二十五条において同じ。)のほか、委員のうち四人以上が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 審査委員会の決議のうち、次に掲げる事項に係るものは、現に在任する委員の全員一致をもって行う。この場合において、当該事項に係る議案を議決する会議に欠席する委員があるときは、当該欠席する委員は、当該議案の内容が適宜の方法により当該欠席する委員に明らかにされ、かつ、その意思の表明を自らがしていることが明らかである方法によってすることができる場合に限り、当該議決に参加することができる。
 一 第三条第一項の規定による同項の協定の締結
 二 第四条第一項第一号の機構の承認
 三 第四条第一項第四号に規定する処分の基準の作成及び変更
 四 第十三条の規定による同条第一号の定款の変更
 五 第二十三条第一項に規定する審査基準の作成及び変更
3 審査委員会の決議のうち、前項各号に掲げる事項以外の事項に係るものは、出席した委員の過半数をもって行う。可否同数のときは、委員長が決する。

(金融監督庁長官による意見の徴求)
第二十条 金融監督庁長官は、第四条第一項第一号の申請を行った発行金融機関等又は同項第五号の協定銀行による取得優先株式等若しくは取得貸付債権の処分の申請に係る金融機関等が、次の各号に掲げる金融機関等であるときは、これらの申請についての機構の承認に係る審査委員会における議決への参加(前条第二項後段の規定による議決への参加を含む。)に先立ち、当該各号に定める者の意見を求めなければならない。
 一 信用協同組合 当該信用協同組合の監督に係る都道府県知事
 二 労働金庫又は労働金庫連合会 労働大臣
 三 一の都道府県の区域の一部をその地区の全部とする農水産業協同組合連合会等 農林水産大臣及び当該農水産業協同組合連合会等の監督に係る都道府県知事
 四 前号に掲げる農水産業協同組合連合会等以外の農水産業協同組合連合会等 農林水産大臣

(審議委員の秘密保持義務)
第二十一条 審議委員は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。審議委員がその職を退いた後も、同様とする。

(審議委員の公務員たる性質)
第二十二条 審議委員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

(審査基準)
第二十三条 審査委員会は、第五条第一項の議決において第四条第一項第一号の申請に係る承認の決議をするための基準(次項において「審査基準」という。)をあらかじめ定め、これを公表しなければならない。
2 審査基準は、協定銀行が優先株式等の引受け等を行おうとする発行金融機関等が、第三条第三項第一号に規定する金融機関又は同項第二号イ若しくはロに規定する金融機関等に該当するものであるか否かを判定する基準のほか、協定銀行による優先株式等の引受け等が行われる次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める要件を規定した基準を含むものでなければならない。
 一 第三条第三項第一号に掲げる場合 協定銀行による優先株式等の引受け等が、発行金融機関等である同号の金融機関の自己資本の充実の状況に照らし破綻処理の円滑な実施のために必要な範囲を超えていないものであること。
 二 第三条第三項第二号に掲げる場合 次に掲げる要件
  イ 協定銀行による発行金融機関等の優先株式等の引受け等が、当該発行金融機関等の経営の再建を目的とするものではなく、信用秩序の維持を目的とするものであること。
  ロ 発行金融機関等の経営の状況が悪化しており、協定銀行が優先株式等の引受け等を行った後でも当該発行金融機関等が破綻する蓋然性が高いと認められる場合でないこと。
  ハ ロに掲げる要件に該当する場合を除くほか、協定銀行が優先株式等の引受け等を行った後相当の期間が経過しても、当該優先株式等の引受け等に係る取得優先株式等又は取得貸付債権の処分をすることが著しく困難であると認められる場合でないこと。

(健全性の確保のための計画)
第二十四条 第四条第一項第一号の申請を行った発行金融機関等は、審査委員会に対し、次に掲げる事項に関する方策を定めた経営の健全性の確保のための計画を提出しなければならない。
 一 経営の合理化及び健全な経営体制の確保に関すること。
 二 財産の状況の健全性の確保に関すること。
 三 その他業務の健全かつ適切な運営の確保に関すること。
2 審査委員会は、前項の規定により提出を受けた計画を適当と認めない委員がある場合には、第五条第一項の議決をすることができない。
3 審査委員会は、第五条第三項の規定による大蔵大臣及び内閣総理大臣の承認があったときは、第一項の規定により提出を受けた計画を公表するものとする。ただし、信用秩序を損なうおそれのある事項、当該計画を提出した発行金融機関等の預金者等その他の取引者の秘密を害するおそれのある事項及び当該発行金融機関等の業務の遂行に不当な不利益を与えるおそれのある事項については、この限りでない。
4 審査委員会は、協定銀行が、金融機関等に係る取得優先株式等又は取得貸付債権の全部につきその処分をし、又はその返済を受けるまでの間、当該金融機関等に対し、第一項の規定により提出を受けた計画の履行状況につき報告を求め、これを公表することができる。この場合において、当該報告を公表するときは、前項ただし書の規定を準用する。

(審査委員会の議事録等の公表)
第二十五条 委員長は、審査委員会が、第五条第一項の議決を行ったときは、速やかに、審査委員会の定めるところにより、当該議決に係る議事の概要を記載した書類を作成し、これを公表しなければならない。
2 委員長は、前項の議決に係る議事録を作成し、審査委員会が適当と認めて定める相当期間経過後に、これを公表しなければならない。

(審査委員会の廃止)
第二十六条 審査委員会は、金融危機管理業務の終了の日として政令で定める日において、これを廃止する。
2 前項の規定により審査委員会が廃止されたときは、前条第二項の委員長の職務は、機構の理事長がこれを引き継ぐものとする。

第四章 政府による財政上の措置等

(政府保証)
第二十七条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構の第十一条第一項の借入れ又は機構債に係る債務の保証をすることができる。

(基金の設置)
第二十八条 機構は、金融危機管理勘定に、金融危機管理業務を円滑に実施するための基金(以下「金融危機管理基金」という。)を置き、第三十一条第二項の規定により政府が交付する国債をこれに充てるものとする。

(協定銀行からの納付金の処理)
第二十九条 機構は、協定銀行から協定の定めにより利益の納付を受けたときは、これを金融危機管理基金に充てるものとする。

(金融危機管理基金の使用等)
第三十条 機構は、第三条第一項第一号に規定する貸付け又は同項第二号に規定する損失の補てんに係る業務を行う場合においては、政令で定めるところにより、金融危機管理基金を使用することができる。
2 機構は、前項の規定によるほか、毎事業年度又は金融危機管理勘定の廃止の際、金融危機管理勘定に欠損金として大蔵省令で定めるところにより計算した金額があるときは、当該金額を限り、金融危機管理基金を使用することができる。
3 機構は、前二項の規定により金融危機管理基金を使用した場合において、その使用に係る金額の全部又は一部の返還(第一項に規定する貸付けに係る貸付金の返済を含む。)がされたときは、当該返還をされた金額を金融危機管理基金に充てるものとする。
4 機構が、第一項の規定により、優先株式等の引受け等に必要な資金の貸付けを行うため金融危機管理基金を使用した場合において、当該貸付けに係る取得優先株式等又は取得貸付債権がその取得価額を下回る価額で処分されたことその他の事由により協定銀行に生じた損失の額として政令で定めるところにより計算した額があるときは、機構は、金融危機管理基金の当該貸付けのための使用に係る金額までを限り、当該損失の額に相当する金額の返済を免除することができる。この場合において、機構がその返済を免除した金額は、金融危機管理基金の使用により第三条第一項第二号に規定する損失の補てんを行ったものとみなす。
5 預金保険法第四十三条の規定は、金融危機管理基金に属する現金の運用について準用する。

(政府からの国債の交付)
第三十一条 政府は、金融危機管理基金に充てるため、国債を発行することができる。
2 政府は、前項の規定により、三兆円を限り、国債を発行し、これを機構に交付するものとする。
3 第一項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4 第一項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5 前各項に定めるもののほか、第一項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、大蔵省令で定める。

(国債の償還等)
第三十二条 政府は、機構が第三十条第一項又は第二項の規定により金融危機管理基金を使用するため、前条第二項の規定により交付した国債の全部又は一部につき機構から償還の請求を受けたときは、速やかに、その償還をしなければならない。
2 政府は、国債整理基金特別会計に所属する株式に係る平成九年度以後の売払収入金については、預金保険法附則第十九条の五第二項の規定により同条第一項に規定する国債の償還に要する費用に優先して充てられるものを除き、前項の規定による償還に要する費用の財源に優先して充てるものとする。
3 前条第一項の規定により発行する国債は、国債整理基金特別会計法(明治三十九年法律第六号)第二条第二項の規定の適用については、国債とみなさない。
4 平成九年度から金融危機管理勘定の廃止の日の属する年度までの間における日本電信電話株式会社の株式の売払収入金(以下この項において「特定期間売払収入金」という。)に係る日本電信電話株式会社の株式の売払収入の活用による社会資本の整備の促進に関する特別措置法(昭和六十二年法律第八十六号)第六条第一項の規定の適用については、平成九年度から当該廃止の日の属する年度までの間においては、特定期間売払収入金は、同項の売払収入金に該当しないものとみなす。
第三十三条 政府は、第三十一条第一項の規定により発行した国債の円滑な償還を確保するため、前条第二項の規定による財源のほか、国債整理基金特別会計法の規定による繰入れを適切に行うものとし、当該繰入れに要する費用に充てるための財源の適切な確保に努めるものとする。

第五章 預金保険機構の特例業務の終了等

(金融危機管理基金の残余の処分等)
第三十四条 機構は、協定銀行の協定の定めによる優先株式等の引受け等の業務の終了の日として政令で定める日において、金融危機管理基金の残高が第三十条第一項及び第二項の規定による金融危機管理基金の使用の見込額として政令で定めるところにより計算した額を超えるときは、その超える部分の額を国庫に納付しなければならない。
2 前項の場合において、金融危機管理基金に第三十一条第二項の規定により交付した国債のうち償還されていないものがあるときは、機構は、その償還されていない国債を、前項の規定により国庫に納付すべき金額を限度として、政府に返還しなければならない。
3 前項の規定により政府に返還された国債の額に相当する金額は、第一項の規定により国庫に納付された金額とみなす。
4 機構は、第二項の規定によるほか、金融危機管理勘定を廃止する場合において、金融危機管理基金に第三十一条第二項の規定により交付した国債のうち償還されていないものがあるときは、その償還されていない国債を政府に返還しなければならない。
5 政府は、第二項又は前項の規定により国債が返還された場合には、直ちに、これを消却しなければならない。
6 機構は、金融危機管理勘定を廃止する場合において、第四項の規定により返還することとなる国債のほかに金融危機管理基金に残余があるときは、当該残余の額を国庫に納付しなければならない。

(金融危機管理勘定の廃止)
第三十五条 機構は、金融危機管理業務の終了の日として政令で定める日において、金融危機管理勘定を廃止するものとする。
2 機構は、金融危機管理勘定の廃止の際、金融危機管理勘定に残余があるときは、当該残余の額を国庫に納付しなければならない。

第六章 雑則

(預金保険法の適用)
第三十六条 この法律により機構の業務が行われる場合には、この法律の規定によるほか、預金保険法を適用する。この場合において、同法第二条第三項中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能の安定化のための緊急措置に関する法律(平成十年法律第五号。以下「金融機能安定化緊急措置法」という。)」と、「債権者」とあるのは「債権者(金融機能安定化緊急措置法の適用にあつては、貯金に係る債権者を含む。)」と、同法第十条第二項中「前項の定款」とあるのは「機構の定款」と、同項第五号中「運営委員会」とあるのは「運営委員会及び金融機能安定化緊急措置法第十二条に規定する金融危機管理審査委員会」と、同法第十五条第五号中「委員会が特に必要と認める事項」とあるのは「委員会が特に必要と認める事項(金融機能安定化緊急措置法の規定による機構の業務に係るものを除く。)」と、同法第三十七条第一項中「銀行持株会社等に限る。)」とあるのは「銀行持株会社等に限る。)(金融機能安定化緊急措置法の規定による業務を行う場合にあつては、金融機能安定化緊急措置法第二条第一項に規定する金融機関等。次項において同じ。)」と、同法第四十四条、第四十五条第二項及び第四十六条第一項中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能安定化緊急措置法」と、同法第五十一条第二項中「業務」とあるのは「業務(金融機能安定化緊急措置法第三条第一項に規定する業務を除く。)」と、同法第百五十二条第一号中「この法律」とあるのは「この法律又は金融機能安定化緊急措置法」と、同条第三号中「第三十四条に規定する業務」とあるのは「第三十四条に規定する業務及び金融機能安定化緊急措置法第三条第一項に規定する業務」と、同条第六号中「第四十三条」とあるのは「第四十三条(金融機能安定化緊急措置法第三十条第五項において準用する場合を含む。)」と、「業務上の余裕金」とあるのは「業務上の余裕金又は金融機能安定化緊急措置法第二十八条に規定する金融危機管理基金に属する現金」とする。

(政令への委任)
第三十七条 この法律に規定するもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、政令で定める。

(主務省令)
第三十八条 第二条第三項から第五項までの規定における主務省令は、大蔵省令・総理府令・労働省令・農林水産省令とする。

(権限の委任)
第三十九条 内閣総理大臣は、この法律による権限(第五条第三項から第五項までの規定による権限を除く。)を金融監督庁長官に委任する。

第七章 罰則

第四十条 第二十一条の規定に違反してその職務上知ることのできた秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 第四条第三項、第五条第六項、第六条第二項又は第七条第二項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした機構の役員又は職員は、五十万円以下の罰金に処する。
3 第九条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
第四十一条 法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者が、その法人の業務に関し、前条第三項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても、同項の刑を科する。

   附 則

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。

(金融監督庁設置までの経過措置)
第二条 金融監督庁設置法(平成九年法律第百一号)の施行の日の前日までの間における第五条第二項から第六項まで、第六条第二項、第十四条第一項及び第二項、第二十条(見出しを含む。)、第二十四条第三項並びに第三十八条の規定の適用については、第五条第二項中「大蔵大臣及び内閣総理大臣」とあり、及び「大蔵大臣並びに内閣総理大臣」とあるのは「大蔵大臣」と、「並びに農林水産大臣及び内閣総理大臣」とあるのは「及び農林水産大臣」と、同条第三項中「大蔵大臣及び内閣総理大臣」とあるのは「大蔵大臣」と、同条第四項及び第五項中「内閣総理大臣」とあるのは「大蔵大臣」と、同条第六項中「大蔵大臣及び内閣総理大臣」とあり、及び「大蔵大臣並びに内閣総理大臣」とあるのは「大蔵大臣」と、「農林水産大臣、内閣総理大臣」とあるのは「農林水産大臣」と、「並びに農林水産大臣及び内閣総理大臣」とあるのは「及び農林水産大臣」と、第六条第二項中「大蔵大臣及び内閣総理大臣」とあるのは「大蔵大臣」と、第十四条第一項中「七人」とあるのは「六人」と、同条第二項中「大蔵大臣、金融監督庁長官」とあるのは「大蔵大臣」と、第二十条(見出しを含む。)中「金融監督庁長官」とあるのは「大蔵大臣」と、第二十四条第三項中「大蔵大臣及び内閣総理大臣」とあるのは「大蔵大臣」と、第三十八条中「大蔵省令・総理府令」とあるのは「大蔵省令」とする。

(日本銀行法の施行までの経過措置)
第三条 日本銀行法(平成九年法律第八十九号)の施行の日(平成十年四月一日)の前日までの間における第十一条第二項の規定の適用については、同項中「日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第四十三条第一項」とあるのは、「日本銀行法(昭和十七年法律第六十七号)第二十七条」とする。

(罰則についての経過措置)
第四条 この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

[第五条 金融監督庁設置法の一部改正]

   附 則 [平成13年11月28日法律第129号] [抄]

(施行期日)
1 この法律は、平成十四年四月一日から施行する。[後略]
(罰則の適用に関する経過措置)
2 この法律の施行前にした行為及びこの法律の規定により従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

   附 則 [平成16年6月18日法律第129号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

   附 則 [平成17年7月26日第87号] [抄]

 この法律は、会社法の施行の日から施行する。[後略]

以上

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