人事訴訟法


公布:平成15年7月16日法律第109号
施行:平成16年4月1日
改正:平成16年6月11日法律第104号
施行:平成19年4月1日
改正:平成16年6月23日法律第130号
施行:平成19年4月1日
改正:平成16年6月23日法律第131号
施行:平成19年4月1日
改正:平成16年6月23日法律第132号
施行:平成19年4月1日
改正:平成16年12月1日法律第147号
施行:平成17年4月1日
改正:平成23年5月2日法律第36号
施行:平成24年4月1日
改正:平成23年6月3日法律第61号
施行:平成24年4月1日

目次

 第一章 総則
  第一節 通則(第一条−第三条)
  第二節 裁判所
   第一款 管轄(第四条−第八条)
   第二款 参与員(第九条−第十一条)
  第三節 当事者(第十二条−第十五条)
  第四節 訴訟費用(第十六条)
  第五節 訴訟手続(第十七条−第二十七条)
  第六節 補則(第二十八条−第三十条)
 第二章 婚姻関係訴訟の特例
  第一節 管轄(第三十一条)
  第二節 附帯処分等(第三十二条−第三十六条)
  第三節 和解並びに請求の放棄及び認諾(第三十七条)
  第四節 履行の確保(第三十八条−第四十条)
 第三章 実親子関係訴訟の特例(第四十一条−第四十三条)
 第四章 養子縁組関係訴訟の特例(第四十四条)
 附則

第一章 総則

第一節 通則

(趣旨)
第一条 この法律は、人事訴訟に関する手続について、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の特例等を定めるものとする。

(定義)
第二条 この法律において「人事訴訟」とは、次に掲げる訴えその他の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴え(以下「人事に関する訴え」という。)に係る訴訟をいう。
 一 婚姻の無効及び取消しの訴え、離婚の訴え、協議上の離婚の無効及び取消しの訴え並びに婚姻関係の存否の確認の訴え
 二 嫡出否認の訴え、認知の訴え、認知の無効及び取消しの訴え、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百七十三条の規定により父を定めることを目的とする訴え並びに実親子関係の存否の確認の訴え
 三 養子縁組の無効及び取消しの訴え、離縁の訴え、協議上の離縁の無効及び取消しの訴え並びに養親子関係の存否の確認の訴え

(最高裁判所規則)
第三条 この法律に定めるもののほか、人事訴訟に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

第二節 裁判所

第一款 管轄

(人事に関する訴えの管轄)
第四条 人事に関する訴えは、当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地又はその死亡の時にこれを有した地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。
2 前項の規定による管轄裁判所が定まらないときは、人事に関する訴えは、最高裁判所規則で定める地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。

(併合請求における管轄)
第五条 数人からの又は数人に対する一の人事に関する訴えで数個の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする数個の請求をする場合には、前条の規定にかかわらず、同条の規定により一の請求について管轄権を有する家庭裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、民事訴訟法第三十八条前段に定める場合に限る。

(調停事件が係属していた家庭裁判所の自庁処理)
第六条 家庭裁判所は、人事訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認める場合においても、当該人事訴訟に係る事件について家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)第十八条第一項の規定により申し立てられた調停に係る事件がその家庭裁判所に係属していたときであって、調停の経過、当事者の意見その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、民事訴訟法第十六条第一項の規定にかかわらず、申立てにより又は職権で、当該人事訴訟の全部又は一部について自ら審理及び裁判をすることができる。

(遅滞を避ける等のための移送)
第七条 家庭裁判所は、人事訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、当該人事訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

(関連請求に係る訴訟の移送)
第八条 家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができる。この場合においては、その移送を受けた家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。
2 前項の規定により移送を受けた家庭裁判所は、同項の人事訴訟に係る事件及びその移送に係る損害の賠償に関する請求に係る事件について口頭弁論の併合を命じなければならない。

第二款 参与員

(参与員)
第九条 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、参与員を審理又は和解の試みに立ち会わせて事件につきその意見を聴くことができる。
2 参与員の員数は、各事件について一人以上とする。
3 参与員は、毎年あらかじめ家庭裁判所の選任した者の中から、事件ごとに家庭裁判所が指定する。
4 前項の規定により選任される者の資格、員数その他同項の選任に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。
5 参与員には、最高裁判所規則で定める額の旅費、日当及び宿泊料を支給する。

(参与員の除斥及び忌避)
第十条 民事訴訟法第二十三条から第二十五条までの規定は、参与員について準用する。
2 参与員について除斥又は忌避の申立てがあったときは、参与員は、その申立てについての決定が確定するまでその申立てがあった事件に関与することができない。

(秘密漏示に対する制裁)
第十一条 参与員又は参与員であった者が正当な理由なくその職務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第三節 当事者

(被告適格)
第十二条 人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者の一方が提起するものにおいては、特別の定めがある場合を除き、他の一方を被告とする。
2 人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者以外の者が提起するものにおいては、特別の定めがある場合を除き、当該身分関係の当事者の双方を被告とし、その一方が死亡した後は、他の一方を被告とする。
3 前二項の規定により当該訴えの被告とすべき者が死亡し、被告とすべき者がないときは、検察官を被告とする。

(人事訴訟における訴訟能力等)
第十三条 人事訴訟の訴訟手続における訴訟行為については、民法第五条第一項及び第二項、第九条、第十三条並びに第十七条並びに民事訴訟法第三十一条並びに第三十二条第一項(同法第四十条第四項において準用する場合を含む。)及び第二項の規定は、適用しない。
2 訴訟行為につき行為能力の制限を受けた者が前項の訴訟行為をしようとする場合において、必要があると認めるときは、裁判長は、申立てにより、弁護士を訴訟代理人に選任することができる。
3 訴訟行為につき行為能力の制限を受けた者が前項の申立てをしない場合においても、裁判長は、弁護士を訴訟代理人に選任すべき旨を命じ、又は職権で弁護士を訴訟代理人に選任することができる。
4 前二項の規定により裁判長が訴訟代理人に選任した弁護士に対し当該訴訟行為につき行為能力の制限を受けた者が支払うべき報酬の額は、裁判所が相当と認める額とする。

第十四条 人事に関する訴えの原告又は被告となるべき者が成年被後見人であるときは、その成年後見人は、成年被後見人のために訴え、又は訴えられることができる。ただし、その成年後見人が当該訴えに係る訴訟の相手方となるときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合には、成年後見監督人が、成年被後見人のために訴え、又は訴えられることができる。

(利害関係人の訴訟参加)
第十五条 検察官を被告とする人事訴訟において、訴訟の結果により相続権を害される第三者(以下「利害関係人」という。)を当該人事訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、裁判所は、被告を補助させるため、決定で、その利害関係人を当該人事訴訟に参加させることができる。
2 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者及び利害関係人の意見を聴かなければならない。
3 民事訴訟法第四十三条第一項の申出又は第一項の決定により検察官を被告とする人事訴訟に参加した利害関係人については、同法第四十五条第二項の規定は、適用しない。
4 前項の利害関係人については、民事訴訟法第四十条第一項から第三項まで(同項については、訴訟手続の中止に関する部分に限る。)の規定を準用する。
5 裁判所は、第一項の決定を取り消すことができる。

第四節 訴訟費用

第十六条 検察官を当事者とする人事訴訟において、民事訴訟法第六十一条から第六十六条までの規定によれば検察官が負担すべき訴訟費用は、国庫の負担とする。
2 利害関係人が民事訴訟法第四十三条第一項の申出又は前条第一項の決定により検察官を被告とする人事訴訟に参加した場合における訴訟費用の負担については、同法第六十一条から第六十六条までの規定を準用する。

第五節 訴訟手続

(関連請求の併合等)
第十七条 人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求とは、民事訴訟法第百三十六条の規定にかかわらず、一の訴えですることができる。この場合においては、当該人事訴訟に係る請求について管轄権を有する家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。
2 人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求を目的とする訴えは、前項に規定する場合のほか、既に当該人事訴訟の係属する家庭裁判所にも提起することができる。この場合においては、同項後段の規定を準用する。
3 第八条第二項の規定は、前項の場合における同項の人事訴訟に係る事件及び同項の損害の賠償に関する請求に係る事件について準用する。

(訴えの変更及び反訴)
第十八条 人事訴訟に関する手続においては、民事訴訟法第百四十三条第一項及び第四項、第百四十六条第一項並びに第三百条の規定にかかわらず、第一審又は控訴審の口頭弁論の終結に至るまで、原告は、請求又は請求の原因を変更することができ、被告は、反訴を提起することができる。

(民事訴訟法の規定の適用除外)
第十九条 人事訴訟の訴訟手続においては、民事訴訟法第百五十七条、第百五十七条の二、第百五十九条第一項、第二百七条第二項、第二百八条、第二百二十四条、第二百二十九条第四項及び第二百四十四条の規定並びに同法第百七十九条の規定中裁判所において当事者が自白した事実に関する部分は、適用しない。
2 人事訴訟における訴訟の目的については、民事訴訟法第二百六十六条及び第二百六十七条の規定は、適用しない。

(職権探知)
第二十条 人事訴訟においては、裁判所は、当事者が主張しない事実をしん酌し、かつ、職権で証拠調べをすることができる。この場合においては、裁判所は、その事実及び証拠調べの結果について当事者の意見を聴かなければならない。

(当事者本人の出頭命令等)
第二十一条 人事訴訟においては、裁判所は、当事者本人を尋問する場合には、その当事者に対し、期日に出頭することを命ずることができる。
2 民事訴訟法第百九十二条から第百九十四条までの規定は、前項の規定により出頭を命じられた当事者が正当な理由なく出頭しない場合について準用する。

(当事者尋問等の公開停止)
第二十二条 人事訴訟における当事者本人若しくは法定代理人(以下この項及び次項において「当事者等」という。)又は証人が当該人事訴訟の目的である身分関係の形成又は存否の確認の基礎となる事項であって自己の私生活上の重大な秘密に係るものについて尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等又は証人が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該身分関係の形成又は存否の確認のための適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。
2 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等及び証人の意見を聴かなければならない。
3 裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。

(検察官の関与)
第二十三条 人事訴訟においては、裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官は、必要があると認めるときは、検察官を期日に立ち会わせて事件につき意見を述べさせることができる。
2 検察官は、前項の規定により期日に立ち会う場合には、事実を主張し、又は証拠の申出をすることができる。

(確定判決の効力が及ぶ者の範囲)
第二十四条 人事訴訟の確定判決は、民事訴訟法第百十五条第一項の規定にかかわらず、第三者に対してもその効力を有する。
2 民法第七百三十二条の規定に違反したことを理由として婚姻の取消しの請求がされた場合におけるその請求を棄却した確定判決は、前婚の配偶者に対しては、前項の規定にかかわらず、その前婚の配偶者がその請求に係る訴訟に参加したときに限り、その効力を有する。

(判決確定後の人事に関する訴えの提起の禁止)
第二十五条 人事訴訟の判決(訴えを不適法として却下した判決を除く。次項において同じ。)が確定した後は、原告は、当該人事訴訟において請求又は請求の原因を変更することにより主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事に関する訴えを提起することができない。
2 人事訴訟の判決が確定した後は、被告は、当該人事訴訟において反訴を提起することにより主張することができた事実に基づいて同一の身分関係についての人事に関する訴えを提起することができない。

(訴訟手続の中断及び受継)
第二十六条 第十二条第二項の規定により人事に関する訴えに係る身分関係の当事者の双方を被告とする場合において、その一方が死亡したときは、他の一方を被告として訴訟を追行する。この場合においては、民事訴訟法第百二十四条第一項第一号の規定は、適用しない。
2 第十二条第一項又は第二項の場合において、被告がいずれも死亡したときは、検察官を被告として訴訟を追行する。

(当事者の死亡による人事訴訟の終了)
第二十七条 人事訴訟の係属中に原告が死亡した場合には、特別の定めがある場合を除き、当該人事訴訟は、当然に終了する。
2 離婚、嫡出否認又は離縁を目的とする人事訴訟の係属中に被告が死亡した場合には、当該人事訴訟は、前条第二項の規定にかかわらず、当然に終了する。

第六節 補則

(利害関係人に対する訴訟係属の通知)
第二十八条 裁判所は、人事に関する訴えが提起された場合における利害関係人であって、父が死亡した後に認知の訴えが提起された場合におけるその子その他の相当と認められるものとして最高裁判所規則で定めるものに対し、訴訟が係属したことを通知するものとする。ただし、訴訟記録上その利害関係人の氏名及び住所又は居所が判明している場合に限る。

(民事訴訟法の適用関係)
第二十九条 人事に関する訴えについては、民事訴訟法第一編第二章第一節、第百四十五条第三項及び第百四十六条第三項の規定は、適用しない。
2 人事訴訟に関する手続についての民事訴訟法の規定の適用については、同法第二十五条第一項中「地方裁判所の一人の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判官の所属する裁判所が、簡易裁判所の裁判官の除斥又は忌避についてはその裁判所の所在地を管轄する地方裁判所」とあるのは「家庭裁判所の一人の裁判官の除斥又は忌避については、その裁判官の所属する裁判所」と、同条第二項並びに同法第百三十二条の五第一項、第百八十五条、第二百三十五条第二項及び第三項、第二百六十九条第一項、第三百二十九条第三項並びに第三百三十七条第一項中「地方裁判所」とあるのは「家庭裁判所」と、同法第二百八十一条第一項中「地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所」とあるのは「家庭裁判所」と、同法第三百十一条第二項中「地方裁判所の判決に対しては最高裁判所に、簡易裁判所の判決に対しては高等裁判所」とあるのは「家庭裁判所の判決に対しては最高裁判所」と、同法第三百三十六条第一項中「地方裁判所及び簡易裁判所」とあるのは「家庭裁判所」とする。

(民事保全法の適用関係等)
第三十条 人事訴訟を本案とする保全命令事件については、民事保全法(平成元年法律第九十一号)第十一条の規定は、適用しない。
2 人事訴訟を本案とする保全命令事件は、民事保全法第十二条第一項の規定にかかわらず、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する家庭裁判所が管轄する。
3 人事訴訟に係る請求と当該請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求とを一の訴えですることができる場合には、当該損害の賠償に関する請求に係る保全命令の申立ては、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する家庭裁判所にもすることができる。

第二章 婚姻関係訴訟の特例

第一節 管轄

第三十一条 家庭裁判所は、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る婚姻の当事者間に成年に達しない子がある場合には、当該訴えに係る訴訟についての第六条及び第七条の規定の適用に当たっては、その子の住所又は居所を考慮しなければならない。

第二節 附帯処分等

(附帯処分についての裁判等)
第三十二条 裁判所は、申立てにより、夫婦の一方が他の一方に対して提起した婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分、財産の分与に関する処分又は標準報酬等の按分割合に関する処分(厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第七十八条の二第二項、国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)第九十三条の五第二項(私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)第二十五条において準用する場合を含む。)又は地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)第百五条第二項の規定による処分をいう。)(以下「附帯処分」と総称する。)についての裁判をしなければならない。
2 前項の場合においては、裁判所は、同項の判決において、当事者に対し、子の引渡し又は金銭の支払その他の財産上の給付その他の給付を命ずることができる。
3 前項の規定は、裁判所が婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において親権者の指定についての裁判をする場合について準用する。
4 裁判所は、第一項の子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分についての裁判又は前項の親権者の指定についての裁判をするに当たっては、子が十五歳以上であるときは、その子の陳述を聴かなければならない。

(事実の調査)
第三十三条 裁判所は、前条第一項の附帯処分についての裁判又は同条第三項の親権者の指定についての裁判をするに当たっては、事実の調査をすることができる。
2 裁判所は、相当と認めるときは、合議体の構成員に命じ、又は家庭裁判所若しくは簡易裁判所に嘱託して前項の事実の調査(以下単に「事実の調査」という。)をさせることができる。
3 前項の規定により受命裁判官又は受託裁判官が事実の調査をする場合には、裁判所及び裁判長の職務は、その裁判官が行う。
4 裁判所が審問期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他の当事者は、当該期日に立ち会うことができる。ただし、当該他の当事者が当該期日に立ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、この限りでない。
5 事実の調査の手続は、公開しない。ただし、裁判所は、相当と認める者の傍聴を許すことができる。

(家庭裁判所調査官による事実の調査)
第三十四条 裁判所は、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。
2 急迫の事情があるときは、裁判長が、家庭裁判所調査官に事実の調査をさせることができる。
3 家庭裁判所調査官は、事実の調査の結果を書面又は口頭で裁判所に報告するものとする。
4 家庭裁判所調査官は、前項の規定による報告に意見を付することができる。

(事実調査部分の閲覧等)
第三十五条 訴訟記録中事実の調査に係る部分(以下この条において「事実調査部分」という。)についての民事訴訟法第九十一条第一項、第三項又は第四項の規定による閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)の請求は、裁判所が次項又は第三項の規定により許可したときに限り、することができる。
2 裁判所は、当事者から事実調査部分の閲覧等の許可の申立てがあった場合においては、その閲覧等を許可しなければならない。ただし、当該事実調査部分中閲覧等を行うことにより次に掲げるおそれがあると認められる部分については、相当と認めるときに限り、その閲覧等を許可することができる。
 一 当事者間に成年に達しない子がある場合におけるその子の利益を害するおそれ
 二 当事者又は第三者の私生活又は業務の平穏を害するおそれ
 三 当事者又は第三者の私生活についての重大な秘密が明らかにされることにより、その者が社会生活を営むのに著しい支障を生じ、又はその者の名誉を著しく害するおそれ
3 裁判所は、利害関係を疎明した第三者から事実調査部分の閲覧等の許可の申立てがあった場合においては、相当と認めるときは、その閲覧等を許可することができる。
4 第二項の申立てを却下した裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 前項の規定による即時抗告が人事訴訟に関する手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであると認められるときは、原裁判所は、その即時抗告を却下しなければならない。
6 前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
7 第三項の申立てを却下した裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(判決によらない婚姻の終了の場合の附帯処分についての裁判)
第三十六条 婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る訴訟において判決によらないで当該訴えに係る婚姻が終了した場合において、既に附帯処分の申立てがされているときであって、その附帯処分に係る事項がその婚姻の終了に際し定められていないときは、受訴裁判所は、その附帯処分についての審理及び裁判をしなければならない。

第三節 和解並びに請求の放棄及び認諾

第三十七条 離婚の訴えに係る訴訟における和解(これにより離婚がされるものに限る。以下この条において同じ。)並びに請求の放棄及び認諾については、第十九条第二項の規定にかかわらず、民事訴訟法第二百六十六条(第二項中請求の認諾に関する部分を除く。)及び第二百六十七条の規定を適用する。ただし、請求の認諾については、第三十二条第一項の附帯処分についての裁判又は同条第三項の親権者の指定についての裁判をすることを要しない場合に限る。
2 離婚の訴えに係る訴訟においては、民事訴訟法第二百六十四条及び第二百六十五条の規定による和解をすることができない。
3 離婚の訴えに係る訴訟における民事訴訟法第百七十条第三項の期日においては、同条第四項の当事者は、和解及び請求の認諾をすることができない。

第四節 履行の確保

(履行の勧告)
第三十八条 第三十二条第一項又は第二項(同条第三項において準用する場合を含む。以下同じ。)の規定による裁判で定められた義務については、当該裁判をした家庭裁判所(上訴裁判所が当該裁判をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判所)は、権利者の申出があるときは、その義務の履行状況を調査し、義務者に対し、その義務の履行を勧告することができる。
2 前項の家庭裁判所は、他の家庭裁判所に同項の規定による調査及び勧告を嘱託することができる。
3 第一項の家庭裁判所及び前項の嘱託を受けた家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に第一項の規定による調査及び勧告をさせることができる。
4 前三項の規定は、第三十二条第一項又は第二項の規定による裁判で定めることができる義務であって、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る訴訟における和解で定められたものの履行について準用する。

(履行命令)
第三十九条 第三十二条第二項の規定による裁判で定められた金銭の支払その他の財産上の給付を目的とする義務の履行を怠った者がある場合において、相当と認めるときは、当該裁判をした家庭裁判所(上訴裁判所が当該裁判をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判所)は、権利者の申立てにより、義務者に対し、相当の期限を定めてその義務の履行をすべきことを命ずることができる。この場合において、その命令は、その命令をする時までに義務者が履行を怠った義務の全部又は一部についてするものとする。
2 前項の家庭裁判所は、同項の規定により義務の履行を命ずるには、義務者の陳述を聴かなければならない。
3 前二項の規定は、第三十二条第二項の規定による裁判で定めることができる金銭の支払その他の財産上の給付を目的とする義務であって、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る訴訟における和解で定められたものの履行について準用する。
4 第一項(前項において準用する場合を含む。)の規定により義務の履行を命じられた者が正当な理由なくその命令に従わないときは、その義務の履行を命じた家庭裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
5 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6 民事訴訟法第百八十九条の規定は、第四項の決定について準用する。

(金銭の寄託)
第四十条 第三十二条第二項の規定による裁判で定められた金銭の支払を目的とする義務の履行については、当該裁判をした家庭裁判所(上訴裁判所が当該裁判をした場合にあっては、第一審裁判所である家庭裁判所)の裁判官の所属する家庭裁判所は、次に掲げる場合には、義務者の申出により、権利者のために金銭の寄託を受けることができる。
 一 金銭の支払を家庭裁判所に寄託してすることを命ずる裁判が効力を生じたとき。
 二 前号に掲げる場合のほか、当該家庭裁判所に所属する裁判官が、当該裁判で定められた金銭の支払を目的とする義務の履行について、その金銭の寄託を相当と認めたとき。
2 第三十二条第二項の規定による裁判において寄託をすべき家庭裁判所が特に定められたときは、金銭の寄託は、その家庭裁判所が受けることができる。
3 前二項の規定により金銭の寄託を受けた家庭裁判所は、権利者の請求により、その金銭を権利者に交付しなければならない。ただし、権利者が反対給付をすべき場合には、寄託者の作成した書面又は裁判書、公正証書その他の反対給付のあった事実を証する書面の提出があったときに限る。
4 前三項の規定は、第三十二条第二項の規定による裁判で定めることができる金銭の支払を目的とする義務であって、婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る訴訟における和解で定められたものの履行について準用する。

第三章 実親子関係訴訟の特例

(嫡出否認の訴えの当事者等)
第四十一条 夫が子の出生前に死亡したとき又は民法第七百七十七条に定める期間内に嫡出否認の訴えを提起しないで死亡したときは、その子のために相続権を害される者その他夫の三親等内の血族は、嫡出否認の訴えを提起することができる。この場合においては、夫の死亡の日から一年以内にその訴えを提起しなければならない。
2 夫が嫡出子の否認の訴えを提起した後に死亡した場合には、前項の規定により嫡出子の否認の訴えを提起することができる者は、夫の死亡の日から六月以内に訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、民事訴訟法第百二十四条第一項後段の規定は、適用しない。

(認知の訴えの当事者等)
第四十二条 認知の訴えにおいては、父又は母を被告とし、その者が死亡した後は、検察官を被告とする。
2 第二十六条第二項の規定は、前項の規定により父又は母を当該訴えの被告とする場合においてその者が死亡したときについて準用する。
3 子が認知の訴えを提起した後に死亡した場合には、その直系卑属又はその法定代理人は、民法第七百八十七条ただし書に定める期間が経過した後、子の死亡の日から六月以内に訴訟手続を受け継ぐことができる。この場合においては、民事訴訟法第百二十四条第一項後段の規定は、適用しない。

(父を定めることを目的とする訴えの当事者等)
第四十三条 子、母、母の配偶者又はその前配偶者は、民法第七百七十三条の規定により父を定めることを目的とする訴えを提起することができる。
2 次の各号に掲げる者が提起する前項の訴えにおいては、それぞれ当該各号に定める者を被告とし、これらの者が死亡した後は、検察官を被告とする。
 一 子又は母 母の配偶者及びその前配偶者(その一方が死亡した後は、他の一方)
 二 母の配偶者 母の前配偶者
 三 母の前配偶者 母の配偶者
3 第二十六条の規定は、前項の規定により同項各号に定める者を当該訴えの被告とする場合においてこれらの者が死亡したときについて準用する。

第四章 養子縁組関係訴訟の特例

第四十四条 第三十七条(第一項ただし書を除く。)の規定は、離縁の訴えに係る訴訟における和解(これにより離縁がされるものに限る。)並びに請求の放棄及び認諾について準用する。

   附 則

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(人事訴訟手続法の廃止)
第二条 人事訴訟手続法(明治三十一年法律第十三号)は、廃止する。

(経過措置の原則)
第三条 この法律(以下「新法」という。)の規定(罰則を除く。)は、この附則に特別の定めがある場合を除き、新法の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、前条の規定による廃止前の人事訴訟手続法の規定により生じた効力を妨げない。

(人事訴訟の管轄等に関する経過措置)
第四条 新法の施行の際現に係属している人事訴訟の管轄及び移送に関しては、附則第十四条の規定による改正後の裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第二十四条第一号及び第三十一条の三第一項の規定並びに第四条から第七条まで及び第三十一条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 新法の施行の際現に係属している人事訴訟の目的と同一の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする請求に係る人事訴訟の管轄に関しては、新法の施行後においても、なお従前の例による。
3 新法の施行の際現に係属している保全命令事件の管轄に関しては、第三十条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(人事訴訟における訴訟能力等に関する経過措置)
第五条 新法の施行の際現に係属している人事訴訟における訴訟行為につき行為能力の制限を受けた者の申立てによる訴訟代理人の選任については、第十三条第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
2 新法の施行前に提起された成年被後見人を原告又は被告とする人事に関する訴えに係る訴訟については、第十四条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(判決確定後の人事に関する訴えの提起に関する経過措置)
第六条 新法の施行前に口頭弁論が終結した人事訴訟の判決が確定した後における同一の身分関係についての人事に関する訴えの提起については、第二十五条の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(民事訴訟法の適用関係に関する経過措置)
第七条 第二十九条の規定は、新法の施行の際現に係属している人事訴訟に関する手続については、適用しない。
(附帯処分等に係る事実の調査及び履行の確保に関する経過措置)
第八条 第二章第二節(第三十二条の規定を除く。)及び第四節の規定は、新法の施行の際現に係属している婚姻の取消し及び離婚の訴えに係る訴訟については、適用しない。

(嫡出否認の訴えに係る訴訟における訴訟手続の受継に関する経過措置)
第九条 新法の施行の際現に係属している嫡出否認の訴えに係る訴訟における新法の施行前に夫が死亡した場合の訴訟手続の受継については、第四十一条第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

(認知の訴えに係る訴訟における訴訟手続の受継に関する経過措置)
第十条 新法の施行の際現に係属している認知の訴えに係る訴訟における新法の施行前に子が死亡した場合の第四十二条第三項の規定の適用については、同項中「子の死亡の日」とあるのは、「この法律の施行の日」とする。

(罰則の適用に関する経過措置)
第十一条 新法の施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

[第十二条 民法の一部改正]

(民法の一部改正に伴う経過措置)
第十三条 前条の規定の施行前にされた婚姻の取消し及び養子縁組の取消しの請求については、なお従前の例による。

[第十四条 裁判所法の一部改正]

(裁判所法の一部改正に伴う家庭裁判所調査官の事務等に関する経過措置)
第十五条 前条の規定の施行の際現に係属している婚姻の取消し及び離婚の訴えに係る訴訟については、同条の規定による改正後の裁判所法第六十一条の二第一項及び第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。

[第十六条 家事審判法の一部改正]

(民事訴訟費用等に関する法律の一部改正)
第十七条 民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)の一部を次のように改正する。
  別表第一の一七の項ホ中「又は家事審判法第十五条の六の規定による申立て」を「、家事審判法第十五条の六の規定による申立て又は人事訴訟法(平成十五年法律第百九号)第三十九条第一項の規定による申立て」に改める。

   附 則 [平成16年6月11日法律第104号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、平成十六年十月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
 六 第五条、第十二条、第十九条、第二十条の二、第二十三条の二、第二十五条、第三十条、第三十三条、第四十四条、第四十四条の三、第四十七条及び第五十三条並びに附則第四十一条から第四十六条まで、第四十八条及び第五十五条の規定 平成十九年四月一日

   附 則 [平成16年6月23日法律第130号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、平成十六年十月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 五 第五条、第八条、第十二条、第十六条、第十九条及び第二十条並びに附則第十六条から第二十一条まで、第三十七条、第七十七条及び第七十八条の規定 平成十九年四月一日

   附 則 [平成16年6月23日法律第131号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、平成十六年十月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
 四 第五条及び第八条並びに附則第五条から第十条までの規定 平成十九年四月一日

   附 則 [平成16年6月23日法律第132号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、平成十六年十月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 三 第四条、第七条、第十一条、第十五条及び第十六条並びに附則第十四条から第十八条まで、第二十条、第二十八条から第四十五条まで、第四十九条及び第五十条の規定 平成十九年四月一日

   附 則 [平成16年12月1日法律第147号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

   附 則 [平成23年6月3日法律第61号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日(以下「施行日」という。)から施行する。[後略]

   附 則 [平成23年5月2日法律第36号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

以上

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