法廷等の秩序維持に関する法律


公布:昭和27年7月31日法律第286号
施行:昭和27年9月25日
改正:昭和29年6月8日法律第163号
施行:昭和29年7月1日
改正:昭和54年3月30日法律第5号
施行:昭和55年10月1日
改正:平成8年6月26日法律第110号
施行:平成10年1月1日

(この法律の目的)
第一条 この法律は、民主社会における法の権威を確保するため、法廷等の秩序を維持し、裁判の威信を保持することを目的とする。

(制裁)
第二条 裁判所又は裁判官(以下「裁判所」という。)が法廷又は法廷外で事件につき審判その他の手続をするに際し、その面前その他直接に知ることができる場所で、秩序を維持するため裁判所が命じた事項を行わず若しくは執つた措置に従わず、又は暴言、暴行、けん騒その他不穏当な言動で裁判所の職務の執行を妨害し若しくは裁判の威信を著しく害した者は、二十日以下の監置若しくは三万円以下の過料に処し、又はこれを併科する。
2 監置は、監置場に留置する。

(事件の審判)
第三条 前条第一項の規定による制裁は、裁判所が科する。
2 前条第一項にあたる行為があつたときは、裁判所は、その場で直ちに、裁判所職員又は警察官に行為者を拘束させることができる。この場合において、拘束の時から二十四時間以内に監置に処する裁判がなされないときは、裁判所は、直ちにその拘束を解かなければならない。

(裁判)
第四条 制裁を科する裁判は、決定でする。
2 前項の裁判は、第二条第一項にあたる行為が終つた時から一箇月を経過した後は、することができない。
3 裁判所は、裁判をするについて必要があるときは、証人尋問その他の証拠調べをすることができる。この場合においては、その性質に反しない限り、民事訴訟法(平成八年法律第百九号)による証拠調べの場合の例による。
4 制裁を科する裁判をしたときは、手続に要した費用の全部又は一部を本人に負担させることができる。

(抗告及び異議の申立)
第五条 地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所又はその裁判官のした制裁を科する裁判に対しては、本人は、裁判が告知された日から五日以内に、その裁判が法令に違反することを理由として、高等裁判所に抗告をすることができる。
2 前項の抗告をするには、申立書を、原裁判所に提出しなければならない。原裁判所は、抗告を理由があるものと認めるとき、その他原裁判を更正することを適当と認めるときは、その裁判を取り消し、又は本人の利益に変更することができる。
3 第一項の抗告は、裁判の執行を停止する効力を有しない。但し、抗告裁判所及び原裁判所は、抗告について裁判があるまで、裁判の執行を停止することができる。
4 高等裁判所又はその裁判官のした制裁を科する裁判に対しては、本人は、その高等裁判所に異議の申立をすることができる。異議の申立には、抗告に関する規定を準用する。

(特別抗告)
第六条 抗告又は異議の申立について高等裁判所のした裁判に対しては、本人は、左の事由があることを理由とする場合に、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
 一 憲法の違反があること、又は憲法の解釈に誤があること。
 二 最高裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
 三 最高裁判所の判例がない場合に、前条の規定による抗告又は異議の申立についてした高等裁判所の判例と相反する判断をしたこと。
2 前項の抗告の提起期間は、五日とする。
3 前条第二項前段及び第三項の規定は、第一項の抗告について準用する。

(執行)
第七条 制裁を科する裁判は、裁判官の命令で執行する。
2 監置の裁判を執行するため必要があるときは、裁判官は、収容状を発することができる。収容状は、勾引状と同一の効力を有するものとし、裁判官の指揮によつて執行する。
3 収容状の執行については、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)中勾引状の執行に関する規定を準用する。
4 第一項の命令で過料に係るものは、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。
5 過料の裁判の執行は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従つてする。ただし、執行前に裁判の送達をすることを要しない。
6 第一項及び前二項の規定は、第四条第四項の規定による裁判の執行について準用する。
7 監置の裁判の執行は、当該裁判があつた時から三箇月を経過した後は、開始することができない。
8 監置の裁判を受けた者について、当該裁判の執行によつて著しく健康を害する虞があるとき、その他重大な事由があるときは、裁判所は、本人の請求又は職権により、当該裁判の執行を停止することができる。

(補償)
第八条 制裁を科する裁判につき、第五条又は第六条の規定により取消の裁判を受けた者が、すでに当該制裁を科する裁判の執行を受けた場合には、その者は、国に対して、当該制裁を科する裁判の執行による補償を請求することができる。
2 前条第二項の収容状による抑留は、前項の規定の適用については、監置の裁判の執行とみなす。
3 第一項の規定による補償については、無罪の裁判を受けた者の補償に関する刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)の規定を準用する。補償決定の公示についても同様である。

(規則)
第九条 制裁を科する裁判に関する手続その他の必要な事項は、最高裁判所が定める。

   附 則 [抄]

1 この法律の施行期日は、公布の日から起算して六十日をこえない範囲内で、政令で定める。

   附 則 [昭和29年6月8日法律第163号] [抄]

(施行期日)
1 この法律中、第五十三条の規定は交通事件即決裁判手続法の施行の日から、その他の部分は、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号。同法附則第一項但書に係る部分を除く。)の施行の日から施行する。

   附 則 [昭和54年3月30日法律第5号] [抄]

(施行期日)
1 この法律は、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)の施行の日(昭和五十五年十月一日)から施行する。
(経過措置)
2 この法律の施行前に申し立てられた民事執行、企業担保権の実行及び破産の事件については、なお従前の例による。
3 前項の事件に関し執行官が受ける手数料及び支払又は償還を受ける費用の額については、同項の規定にかかわらず、最高裁判所規則の定めるところによる。

   附 則 [平成8年6月26日法律第110号] [抄]

 この法律は、新民訴法の施行の日から施行する。

以上

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