犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律


犯罪被害者等の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(公布当時)
犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(平成19年法律第95号で改題)

公布:平成12年5月19日法律第75号
施行:平成12年11月1日
改正:平成19年6月27日法律第95号
施行:平成20年12月1日(附則第1条第2号:平成19年12月26日)
改正:平成23年5月2日法律第36号
施行:平成24年4月1日

目次

 第一章 総則(第一条)
 第二章 公判手続の傍聴(第二条)
 第三章 公判記録の閲覧及び謄写(第三条・第四条)
 第四章 被害者参加弁護士の選定等(第五条−第十二条)
 第五章 民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解(第十三条−第十六条)
 第六章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例
  第一節 損害賠償命令の申立て等(第十七条−第二十二条)
  第二節 審理及び裁判等(第二十三条−第二十六条)
  第三節 異議等(第二十七条−第三十一条)
  第四節 民事訴訟手続への移行(第三十二条)
  第五節 補則(第三十三条・第三十四条)
 第七章 雑則(第三十五条−第三十七条)
 附則

第一章 総則

(目的)
第一条 この法律は、犯罪により害を被った者(以下「被害者」という。)及びその遺族がその被害に係る刑事事件の審理の状況及び内容について深い関心を有するとともに、これらの者の受けた身体的、財産的被害その他の被害の回復には困難を伴う場合があることにかんがみ、刑事手続に付随するものとして、被害者及びその遺族の心情を尊重し、かつその被害の回復に資するための措置を定め、並びにこれらの者による損害賠償請求に係る紛争を簡易かつ迅速に解決することに資するための裁判手続の特例を定め、もってその権利利益の保護を図ることを目的とする。

第二章 公判手続の傍聴

第二条 刑事被告事件の係属する裁判所の裁判長は、当該被告事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ)又は当該被害者の法定代理人から、当該被告事件の公判手続の傍聴の申出があるときは、傍聴席及び傍聴を希望する者の数その他の事情を考慮しつつ、申出をした者が傍聴できるよう配慮しなければならない。

第三章 公判記録の閲覧及び謄写

(被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)
第三条 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、閲覧又は謄写を求める理由が正当でないと認める場合及び犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して閲覧又は謄写をさせることが相当でないと認める場合を除き、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせるものとする。
2 裁判所は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
3 第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。

(同種余罪の被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)
第四条 刑事被告事件の係属する裁判所は、第一回の公判期日後当該被告事件の終結までの間において、次に掲げる者から、当該被告事件の訴訟記録の閲覧又は謄写の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、第一号又は第二号に掲げる者の損害賠償請求権の行使のために必要があると認める場合であって、犯罪の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、申出をした者にその閲覧又は謄写をさせることができる。
 一 被告人又は共犯により被告事件に係る犯罪行為と同様の態様で継続的に又は反復して行われたこれと同一又は同種の罪の犯罪行為の被害者
 二 前号に掲げる者が死亡した場合又はその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族又は兄弟姉妹
 三 第一号に掲げる者の法定代理人
 四 前三号に掲げる者から委託を受けた弁護士
2 前項の申出は、検察官を経由してしなければならない。この場合においては、その申出をする者は、同項各号のいずれかに該当する者であることを疎明する資料を提出しなければならない。
3 検察官は、第一項の申出があったときは、裁判所に対し、意見を付してこれを通知するとともに、前項の規定により提出を受けた資料があるときは、これを送付するものとする。
4 前条第二項及び第三項の規定は、第一項の規定による訴訟記録の閲覧又は謄写について準用する。

第四章 被害者参加弁護士の選定等

(被害者参加弁護士の選定の請求)
第五条 刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第三百十六条の三十四から第三百十六条の三十八までに規定する行為を弁護士に委託しようとする被害者参加人(同法第三百十六条の三十三第三項に規定する被害者参加人をいう。以下同じ。)であって、その資力(その者に属する現金、預金その他政令で定めるこれらに準ずる資産の合計額をいう。以下同じ。)から、手続への参加を許された刑事被告事件に係る犯罪行為により生じた負傷又は疾病の療養に要する費用その他の当該犯罪行為を原因として請求の日から三月以内に支出することとなると認められる費用の額(以下「療養費等の額」という。)を控除した額が基準額(標準的な三月間の必要生計費を勘案して一般に被害者参加弁護士(被害者参加人の委託を受けて同法第三百十六条の三十四から第三百十六条の三十八までに規定する行為を行う弁護士をいう。以下同じ。)の報酬及び費用を賄うに足りる額として政令で定める額をいう。以下同じ。)に満たないものは、当該被告事件の係属する裁判所に対し、被害者参加弁護士を選定することを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、日本司法支援センター(総合法律支援法(平成十六年法律第七十四号)第十三条に規定する日本司法支援センターをいう。以下同じ。)を経由してしなければならない。この場合においては、被害者参加人は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める書面を提出しなければならない。
 一 その資力が基準額に満たない者 資力及びその内訳を申告する書面
 二 前号に掲げる者以外の者 資力及び療養費等の額並びにこれらの内訳を申告する書面
3 日本司法支援センターは、第一項の規定による請求があったときは、裁判所に対し、これを通知するとともに、前項の規定により提出を受けた書面を送付しなければならない。

(被害者参加弁護士の候補の指名及び通知)
第六条 日本司法支援センターは、前条第一項の規定による請求があったときは、裁判所が選定する被害者参加弁護士の候補を指名し、裁判所に通知しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、日本司法支援センターは、次条第一項各号のいずれかに該当することが明らかであると認めるときは、前項の規定による指名及び通知をしないことができる。この場合においては、日本司法支援センターは、裁判所にその旨を通知しなければならない。
3 日本司法支援センターは、第一項の規定による指名をするに当たっては、前条第一項の規定による請求をした者の意見を聴かなければならない。

(被害者参加弁護士の選定)
第七条 裁判所は、第五条第一項の規定による請求があったときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該被害者参加人のため被害者参加弁護士を選定するものとする。
 一 請求が不適法であるとき。
 二 請求をした者が第五条第一項に規定する者に該当しないとき。
 三 請求をした者がその責めに帰すべき事由により被害者参加弁護士の選定を取り消された者であるとき。 2 裁判所は、前項の規定により被害者参加弁護士を選定する場合において、必要があるときは、日本司法支援センターに対し、被害者参加弁護士の候補を指名して通知するよう求めることができる。この場合においては、前条第一項及び第三項の規定を準用する。

(被害者参加弁護士の選定の効力)
第八条 裁判所による被害者参加弁護士の選定は、審級ごとにしなければならない。
2 被害者参加弁護士の選定は、弁論が併合された事件についてもその効力を有する。ただし、被害者参加人が手続への参加を許されていない事件については、この限りでない。
3 被害者参加弁護士の選定は、刑事訴訟法第三百十六条の三十三第三項の決定があったときは、その効力を失う。
4 裁判所により選定された被害者参加弁護士は、旅費、日当、宿泊料及び報酬を請求することができる。
5 前項の規定により被害者参加弁護士に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の額については、刑事訴訟法第三十八条第二項の規定により弁護人に支給すべき旅費、日当、宿泊料及び報酬の例による。

(被害者参加弁護士の選定の取消し)
第九条 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、被害者参加弁護士の選定を取り消すことができる。
 一 被害者参加人が自ら刑事訴訟法第三百十六条の三十四から第三百十六条の三十八までに規定する行為を他の弁護士に委託したことその他の事由により被害者参加弁護士にその職務を行わせる必要がなくなったとき。
 二 被害者参加人と被害者参加弁護士との利益が相反する状況にあり被害者参加弁護士にその職務を継続させることが相当でないとき。
 三 心身の故障その他の事由により、被害者参加弁護士が職務を行うことができず、又は職務を行うことが困難となったとき。
 四 被害者参加弁護士がその任務に著しく反したことによりその職務を継続させることが相当でないとき。  五 被害者参加弁護士に対する暴行、脅迫その他の被害者参加人の責めに帰すべき事由により被害者参加弁護士にその職務を継続させることが相当でないとき。
2 裁判所は、前項第二号から第四号までに掲げる事由により被害者参加弁護士の選定を取り消したときは、更に被害者参加弁護士を選定するものとする。この場合においては、第七条第二項の規定を準用する。

(虚偽の申告書の提出に対する制裁)
第十条 被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力又は療養費等の額について虚偽の記載のある第五条第二項各号に定める書面を提出したときは、十万円以下の過料に処する。

(費用の徴収)
第十一条 被害者参加人が、裁判所の判断を誤らせる目的で、その資力又は療養費等の額について虚偽の記載のある第五条第二項各号に定める書面を提出したことによりその判断を誤らせたときは、裁判所は、決定で、当該被害者参加人から、被害者参加弁護士に支給した旅費、日当、宿泊料及び報酬の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。この場合においては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。
3 費用賠償の裁判の執行に関する刑事訴訟法の規定は、第一項の決定の執行について準用する。

(刑事訴訟法の準用)
第十二条 刑事訴訟法第四十三条第三項及び第四項の規定は被害者参加弁護士の選定及びその取消しについて、同条第三項及び第四項並びに同法第四十四条第一項の規定は前条第一項の決定について、それぞれ準用する。

第五章 民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解

(民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解)
第十三条 刑事被告事件の被告人と被害者等は、両者の間における民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る。)について合意が成立した場合には、当該被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所に対し、共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
2 前項の合意が被告人の被害者等に対する金銭の支払を内容とする場合において、被告人以外の者が被害者等に対し当該債務について保証する旨又は連帯して責任を負う旨を約したときは、その者も、同項の申立てとともに、被告人及び被害者等と共同してその旨の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。
3 第二項の規定による申立ては、弁論の終結までに、公判期日に出頭し、当該申立てに係る合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実を記載した書面を提出してしなければならない。
4 第一項又は第二項の規定による申立てに係る合意を公判調書に記載したときは、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。

(和解記録)
第十四条 前条第一項若しくは第二項の規定による申立てに基づき公判調書に記載された合意をした者又は利害関係を疎明した第三者は、第三章及び刑事訴訟法第四十九条の規定にかかわらず、裁判所書記官に対し、当該公判調書(当該合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実が記載された部分に限る。)、当該申立てに係る前条第三項の書面その他の当該合意に関する記録(以下「和解記録」という。)の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は和解に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、和解記録の閲覧及び謄写の請求は、和解記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
2 前項に規定する和解記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は和解に関する事項の証明書の交付の請求に関する裁判所書記官の処分に対する異議の申立てについては民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第百二十一条の例により、和解記録についての秘密保護のための閲覧等の制限の手続については同法第九十二条の例による。
3 和解記録は、刑事被告事件の終結後は、当該被告事件の第一審裁判所において保管するものとする。

(民事訴訟法の準用)
第十五条 前二条に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第一編第三章第一節(選定当事者及び特別代理人に関する規定を除く。)及び第四節(第六十条を除く。)の規定を準用する。

(執行文付与の訴え等の管轄の特則)
第十六条 第十三条に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に係る執行文付与の訴え、執行文付与に対する異議の訴え及び請求異議の訴えは、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第三十三条第二項(同法第三十四条第三項及び第三十五条第三項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、当該被告事件の第一審裁判所(第一審裁判所が簡易裁判所である場合において、その和解に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)の管轄に専属する。

第六章 刑事訴訟手続に伴う犯罪被害者等の損害賠償請求に係る裁判手続の特例

第一節 損害賠償命令の申立て等

(損害賠償命令の申立て)
第十七条 次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第四百五十一条第一項の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。
 一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪
 二 次に掲げる罪又はその未遂罪
  イ 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十六条から第百七十八条まで(強制わいせつ、強姦(かん)、準強制わいせつ及び準強姦)の罪
  ロ 刑法第二百二十条(逮捕及び監禁)の罪
  ハ 刑法第二百二十四条から第二百二十七条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪
  ニ イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く。)
2 損害賠償命令の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面を提出してしなければならない。
 一 当事者及び法定代理人
 二 請求の趣旨及び刑事被告事件に係る訴因として特定された事実その他請求を特定するに足りる事実
3 前項の書面には、同項各号に掲げる事項その他最高裁判所規則で定める事項以外の事項を記載してはならない。

(申立書の送達)
第十八条 裁判所は、前条第二項の書面の提出を受けたときは、第二十一条第一項第一号の規定により損害賠償命令の申立てを却下する場合を除き、遅滞なく、当該書面を申立ての相手方である被告人に送達しなければならない。

(管轄に関する決定の効力)
第十九条 刑事被告事件について刑事訴訟法第七条、第八条、第十一条第二項若しくは第十九条第一項の決定又は同法第十七条若しくは第十八条の規定による管轄移転の請求に対する決定があったときは、これらの決定により当該被告事件の審判を行うこととなった裁判所が、損害賠償命令の申立てについての審理及び裁判を行う。

(終局裁判の告知があるまでの取扱い)
第二十条 損害賠償命令の申立てについての審理(請求の放棄及び認諾並びに和解(第十三条の規定による民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解を除く。)のための手続を含む。)及び裁判(次条第一項第一号又は第二号の規定によるものを除く。)は、刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでは、これを行わない。
2 裁判所は、前項に規定する終局裁判の告知があるまでの間、申立人に、当該刑事被告事件の公判期日を通知しなければならない。

(申立ての却下)
第二十一条 裁判所は、次に掲げる場合には、決定で、損害賠償命令の申立てを却下しなければならない。
 一 損害賠償命令の申立てが不適法であると認めるとき(刑事被告事件に係る罰条が撤回又は変更されたため、当該被告事件が第十七条第一項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなったときを除く。)。
 二 刑事訴訟法第四条、第五条又は第十条第二項の決定により、刑事被告事件が地方裁判所以外の裁判所に係属することとなったとき。
 三 刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百二十九条若しくは第三百三十六条から第三百三十八条までの判決若しくは同法第三百三十九条の決定又は少年法(昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条の決定があったとき。
 四 刑事被告事件について、刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合において、当該言渡しに係る罪が第十七条第一項各号に掲げる罪に該当しないとき。
2 前項第一号に該当することを理由とする同項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3 前項の規定による場合のほか、第一項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。

(時効の中断)
第二十二条 損害賠償命令の申立ては、前条第一項の決定(同項第一号に該当することを理由とするものを除く。)の告知を受けたときは、当該告知を受けた時から六月以内に、その申立てに係る請求について、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事審判法(昭和二十二年法律第百五十二号)による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

第二節 審理及び裁判等

(任意的口頭弁論)
第二十三条 損害賠償命令の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。
2 前項の規定により口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができる。

(審理)
第二十四条 刑事被告事件について刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合(当該言渡しに係る罪が第十七条第一項各号に掲げる罪に該当する場合に限る。)には、裁判所は、直ちに、損害賠償命令の申立てについての審理のための期日(以下「審理期日」という。)を開かなければならない。ただし、直ちに審理期日を開くことが相当でないと認めるときは、裁判長は、速やかに、最初の審理期日を定めなければならない。
2 審理期日には、当事者を呼び出さなければならない。
3 損害賠償命令の申立てについては、特別の事情がある場合を除き、四回以内の審理期日において、審理を終結しなければならない。
4 裁判所は、最初の審理期日において、刑事被告事件の訴訟記録のうち必要でないと認めるものを除き、その取調べをしなければならない。

(審理の終結)
第十七条 裁判所は、審理を終結するときは、審理期日においてその旨を宣言しなければならない。

(損害賠償命令)
第二十六条 損害賠償命令の申立てについての裁判(第二十一条第一項の決定を除く。以下この条から第二十八条までにおいて同じ。)は、次に掲げる事項を記載した決定書を作成して行わなければならない。
 一 主文
 二 請求の趣旨及び当事者の主張の要旨
 三 理由の要旨
 四 審理の終結の日
 五 当事者及び法定代理人
 六 裁判所
2 損害賠償命令については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。
3 第一項の決定書は、当事者に送達しなければならない。この場合においては、損害賠償命令の申立てについての裁判の効力は、当事者に送達された時に生ずる。
4 裁判所は、相当と認めるときは、第一項の規定にかかわらず、決定書の作成に代えて、当事者が出頭する審理期日において主文及び理由の要旨を口頭で告知する方法により、損害賠償命令の申立てについての裁判を行うことができる。この場合においては、当該裁判の効力は、その告知がされた時に生ずる。
5 裁判所は、前項の規定により損害賠償命令の申立てについての裁判を行った場合には、裁判所書記官に、第一項各号に掲げる事項を調書に記載させなければならない。

第三節 異議等

(異議の申立て等)
第二十七条 当事者は、損害賠償命令の申立てについての裁判に対し、前条第三項の規定による送達又は同条第四項の規定による告知を受けた日から二週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。
2 裁判所は、異議の申立てが不適法であると認めるときは、決定で、これを却下しなければならない。
3 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
4 適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、仮執行の宣言を付したものを除き、その効力を失う。
5 適法な異議の申立てがないときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、確定判決と同一の効力を有する。
6 民事訴訟法第三百五十八条及び第三百六十条の規定は、第一項の異議について準用する。

(訴え提起の擬制等)
第二十八条 損害賠償命令の申立てについての裁判に対し適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てに係る請求については、その目的の価額に従い、当該申立ての時に、当該申立てをした者が指定した地(その指定がないときは、当該申立ての相手方である被告人の普通裁判籍の所在地)を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所に訴えの提起があったものとみなす。この場合においては、第十七条第二項の書面を訴状と、第十八条の規定による送達を訴状の送達とみなす。
2 前項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、損害賠償命令の申立てに係る事件(以下「損害賠償命令事件」という。)に関する手続の費用は、訴訟費用の一部とする。
3 第一項の地方裁判所又は簡易裁判所は、その訴えに係る訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、決定で、これを管轄裁判所に移送しなければならない。
4 前項の規定による移送の決定及び当該移送の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。

(記録の送付等)
第二十九条 前条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、裁判所は、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、第二十四条第四項の規定により取り調べた当該被告事件の訴訟記録(以下「刑事関係記録」という。)中、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認めるもの、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認めるものその他前条第一項の地方裁判所又は簡易裁判所に送付することが相当でないと認めるものを特定しなければならない。
2 裁判所書記官は、前条第一項の地方裁判所又は簡易裁判所の裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録(前項の規定により裁判所が特定したものを除く。)を送付しなければならない。

(異議後の民事訴訟手続における書証の申出の特例)
第三十条 第二十八条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における前条第二項の規定により送付された記録についての書証の申出は、民事訴訟法第二百十九条の規定にかかわらず、書証とすべきものを特定することによりすることができる。

(異議後の判決)
第三十一条 仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十八条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合において、当該訴えについてすべき判決が損害賠償命令と符合するときは、その判決において、損害賠償命令を認可しなければならない。ただし、損害賠償命令の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償命令を認可する場合を除き、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における当該訴えについてすべき判決においては、損害賠償命令を取り消さなければならない。
3 民事訴訟法第三百六十三条の規定は、仮執行の宣言を付した損害賠償命令に係る請求について第二十条第一項の規定により訴えの提起があったものとみなされた場合における訴訟費用について準用する。この場合において、同法第三百六十三条第一項中「異議を却下し、又は手形訴訟」とあるのは、「損害賠償命令」と読み替えるものとする。

第四節 民事訴訟手続への移行

第三十二条 裁判所は、最初の審理期日を開いた後、審理に日時を要するため第二十四条第三項に規定するところにより審理を終結することが困難であると認めるときは、申立てにより又は職権で、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をすることができる。
2 次に掲げる場合には、裁判所は、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をしなければならない。
 一 刑事被告事件について終局裁判の告知があるまでに、申立人から、損害賠償命令の申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があったとき。
 二 損害賠償命令の申立てについての裁判の告知があるまでに、当事者から、当該申立てに係る請求についての審理及び裁判を民事訴訟手続で行うことを求める旨の申述があり、かつ、これについて相手方の同意があったとき。
3 前二項の決定及び第一項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。
4 第二十八条から第三十条までの規定は、第一項又は第二項の規定により損害賠償命令事件が終了した場合について準用する。

第五節 補則

(損害賠償命令事件の記録の閲覧等)
第三十三条 当事者又は利害関係を疎明した第三者は、裁判所書記官に対し、損害賠償命令事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は損害賠償命令事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。
2 前項の規定は、損害賠償命令事件の記録中の録音テープ又はビデオテープ(これらに準ずる方法により一定の事項を記録した物を含む。)に関しては、適用しない。この場合において、これらの物について当事者又は利害関係を疎明した第三者の請求があるときは、裁判所書記官は、その複製を許さなければならない。
3 前二項の規定にかかわらず、刑事関係記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又はその複製(以下この条において「閲覧等」という。)の請求については、裁判所が許可したときに限り、することができる。
4 裁判所は、当事者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、不当な目的によるものと認める場合、関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害するおそれがあると認める場合、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれがあると認める場合その他相当でないと認める場合を除き、その閲覧等を許可しなければならない。
5 裁判所は、利害関係を疎明した第三者から刑事関係記録の閲覧等の許可の申立てがあったときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見(刑事被告事件に係る訴訟が終結した後においては、当該訴訟の記録を保管する検察官の意見)を聴き、正当な理由がある場合であって、関係者の名誉又は生活の平穏を害するおそれの有無、捜査又は公判に支障を及ぼすおそれの有無その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その閲覧等を許可することができる。
6 損害賠償命令事件の記録の閲覧、謄写及び複製の請求は、当該記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは、することができない。
7 第四項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
8 第五項の申立てを却下する決定に対しては、不服を申し立てることができない。

(民事訴訟法の準用)
第三十四条 特別の定めがある場合を除き、損害賠償命令事件に関する手続については、その性質に反しない限り、民事訴訟法第二条、第十四条、第一編第二章第三節、第三章(第四十七条から第五十一条までを除く。)、第四章、第五章(第八十七条、第九十一条、第二節第二款、第百十六条及び第百十八条を除く。)、第六章及び第七章、第二編第一章(第百三十三条、第百三十四条、第百三十七条第二項及び第三項、第百三十八条第一項、第百三十九条、第百四十条、第百四十五条並びに第百四十六条を除く。)、第三章(第百五十六条の二、第百五十七条の二、第百五十八条、第百五十九条第三項、第百六十一条第三項及び第三節を除く。)、第四章(第二百三十五条第一項ただし書及び第二百三十六条を除く。)、第五章(第二百四十九条から第二百五十五条まで並びに第二百五十九条第一項及び第二項を除く。)及び第六章(第二百六十二条第二項、第二百六十三条及び第二百六十六条第二項を除く。)、第三編第三章、第四編並びに第八編(第四百三条第一項第一号、第二号及び第四号から第六号までを除く。)の規定を準用する。

第七章 雑則

(公判記録の閲覧及び謄写等の手数料)
第三十五条 第三条第一項又は第四条第一項の規定による訴訟記録の閲覧又は謄写の手数料については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律(昭和四十六年法律第四十号)第七条から第十条まで及び別表第二の一の項から三の項までの規定(同表一の項上欄中「(事件の係属中に当事者等が請求するものを除く。)」とある部分を除く。)を準用する。
2 第五章に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解に関する手続の手数料については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項及び第七条から第十条まで並びに別表第一の九の項、一七の項及び一八の項(上欄(4)に係る部分に限る。)並びに別表第二の一の項から三の項までの規定(同表一の項上欄中「(事件の係属中に当事者等が請求するものを除く。)」とある部分を除く。)を準用する。

(損害賠償命令事件に関する手続の手数料等)
第三十六条 損害賠償命令の申立てをするには、二千円の手数料を納めなければならない。
2 民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項及び別表第一の一七の項の規定は、第二十七条第一項の規定による異議の申立ての手数料について準用する。
3 損害賠償命令の申立てをした者は、第二十八条第一項(第三十二条第四項において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされたときは、速やかに、民事訴訟費用等に関する法律第三条第一項及び別表第一の一の項の規定により納めるべき手数料の額から損害賠償命令の申立てについて納めた手数料の額を控除した額の手数料を納めなければならない。
4 前三項に規定するもののほか、損害賠償命令事件に関する手続の費用については、その性質に反しない限り、民事訴訟費用等に関する法律の規定を準用する。

(最高裁判所規則)
第三十七条 この法律に定めるもののほか、第三章に規定する訴訟記録の閲覧又は謄写、第四章に規定する被害者参加弁護士の選定等、第五章に規定する民事上の争いについての刑事訴訟手続における和解及び損害賠償命令事件に関する手続について必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

   附 則

(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
[2 刑事確定訴訟記録法(昭和六十二年法律第六十四号)の一部改正]

   附 則 [平成19年6月27日法律第95号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
 二 第一条(刑事訴訟法第二百九十条の次に一条を加える改正規定、同法第二百九十一条第一項の次に一項を加える改正規定、同法第二百九十一条の二及び第二百九十五条の改正規定、同法第二百九十九条の二の次に一条を加える改正規定並びに同法第三百五条、第三百十六条の二十三、第三百二十一条の二第二項及び第三百五十条の八の改正規定に限る。)及び第三条の規定 公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日

(経過措置)
第三条 第一条の規定による改正後の刑事訴訟法第三百十六条の五第十一号、第三百十六条の十一(第三百十六条の五第十一号に係る部分に限る。)及び第二編第三章第三節の規定は、この法律の施行の際現に係属している刑事被告事件については、適用しない。この法律の施行の日前判決が確定した刑事被告事件であってこの法律の施行の日以後再審開始の決定が確定したものについても、同様とする。
2 第四条の規定による改正後の犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第五章及び第二十八条の規定は、この法律の施行の際現に係属している刑事被告事件については、適用しない。

   附 則 [平成20年4月23日法律第19号] [抄]

(施行期日)
1 この法律は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成十九年法律第九十五号)の施行の日から施行する。

   附 則 [平成23年5月2日法律第36号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

以上

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