中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律


公布:平成6年4月6日法律第30号
施行:平成6年10月1日
改正:平成6年11月9日法律第95号
施行:平成8年4月1日
改正:平成11年12月22日法律第160号
施行:平成13年1月6日
改正:平成19年7月6日法律第109号
施行:平成22年1月1日
改正:平成19年12月5日法律第127号
施行:平成20年1月1日(附則第1条第1号:平成19年12月5日,同条第3号:平成20年3月1日,同条第4号:平成20年4月1日)

(目的)
第一条 この法律は、今次の大戦に起因して生じた混乱等により、本邦に引き揚げることができず引き続き本邦以外の地域に居住することを余儀なくされた中国残留邦人等の置かれている事情にかんがみ、これらの者の円滑な帰国を促進するとともに、永住帰国した者の自立の支援を行うことを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「中国残留邦人等」とは、次に掲げる者をいう。
 一 中国の地域における昭和二十年八月九日以後の混乱等の状況の下で本邦に引き揚げることなく同年九月二日以前から引き続き中国の地域に居住している者であって同日において日本国民として本邦に本籍を有していたもの及びこれらの者を両親として同月三日以後中国の地域で出生し、引き続き中国の地域に居住している者並びにこれらの者に準ずる事情にあるものとして厚生労働省令で定める者
 二 中国の地域以外の地域において前号に規定する者と同様の事情にあるものとして厚生労働省令で定める者
2 厚生労働大臣は、前項第一号又は第二号の厚生労働省令を定めようとするときは、あらかじめ、法務大臣及び外務大臣と協議しなければならない。
3 この法律において「永住帰国」とは、本邦に永住する目的で本邦に帰国することをいう。
4 この法律において「一時帰国」とは、親族の訪問、墓参りその他の厚生労働省令で定める目的で本邦に短期間滞在するために本邦に帰国することをいう。

(国等の責務)
第三条 国は、本邦への帰国を希望する中国残留邦人等の円滑な帰国を促進するため、必要な施策を講ずるものとする。

第四条 国及び地方公共団体は、永住帰国した中国残留邦人等の地域社会における早期の自立の促進及び生活の安定を図るため、必要な施策を講ずるものとする。
2 国は、必要があると認めるときは、地方公共団体が講ずる前項の施策について、援助を行うものとする。

第五条 国及び地方公共団体は、中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援のための施策を有機的連携の下に総合的に、策定し、及び実施するものとする。

(永住帰国旅費の支給等)
第六条 国は、中国残留邦人等が永住帰国する場合には、当該中国残留邦人等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該永住帰国のための旅行に要する費用(当該永住帰国する中国残留邦人等と本邦で生活を共にするために本邦に入国する当該中国残留邦人等の親族等であって厚生労働省令で定めるものがいる場合には、当該親族等の本邦への旅行に要する費用を含む。)を支給する。
2 国は、中国残留邦人等が永住帰国する場合には、当該中国残留邦人等及びその親族等(前項に規定する当該親族等をいう。以下第十一条までにおいて同じ。)が出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)その他出入国に関する法令の規定に基づき円滑に帰国し又は入国することができるよう特別の配慮をするものとする。

(自立支度金の支給)
第七条 国は、中国残留邦人等が永住帰国した場合には、当該中国残留邦人等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、中国残留邦人等及びその親族等の生活基盤の確立に資するために必要な資金を、一時金として支給する。

(生活相談等)
第八条 国及び地方公共団体は、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするため、これらの者の相談に応じ必要な助言を行うこと、日本語の習得を援助すること等必要な施策を講ずるものとする。

(住宅の供給の促進)
第九条 国及び地方公共団体は、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等の居住の安定を図るため、公営住宅(公営住宅法(昭和二十六年法律第百九十三号)第二条第二号に規定する公営住宅をいう。次項において同じ。)等の供給の促進のために必要な施策を講ずるものとする。
2 地方公共団体は、公営住宅の供給を行う場合には、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等の居住の安定が図られるよう特別の配慮をするものとする。

(雇用の機会の確保)
第十条 国及び地方公共団体は、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等の雇用の機会の確保を図るため、職業訓練の実施、就職のあっせん等必要な施策を講ずるものとする。

(教育の機会の確保)
第十一条 国及び地方公共団体は、永住帰国した中国残留邦人等及びその親族等が必要な教育を受けることができるようにするため、就学の円滑化、教育の充実等のために必要な施策を講ずるものとする。

(就籍等の手続に係る便宜の供与)
第十二条 国は、永住帰国した中国残留邦人等が戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)第百十条第一項に規定する就籍その他戸籍に関する手続を行う場合においてその手続を円滑に行うことができるようにするため、必要な便宜を供与するものとする。

(国民年金の特例等)
第十三条 永住帰国した中国残留邦人等(明治四十四年四月二日以後に生まれた者であって、永住帰国した日から引き続き一年以上本邦に住所を有するものに限る。以下この項及び第五項において同じ。)であって、昭和二十一年十二月三十一日以前に生まれたもの(同日後に生まれた者であって同日以前に生まれた永住帰国した中国残留邦人等に準ずる事情にあるものとして厚生労働省令で定める者を含む。)に係る昭和三十六年四月一日から初めて永住帰国した日の前日までの期間であって政令で定めるものについては、政令で定めるところにより、国民年金法等の一部を改正する法律(昭和六十年法律第三十四号。第三項において「昭和六十年法律第三十四号」という。)第一条の規定による改正前の国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)(以下「旧国民年金法」という。)による被保険者期間(以下「旧被保険者期間」という。)又は国民年金法第七条第一項第一号に規定する第一号被保険者としての国民年金の被保険者期間(以下「新被保険者期間」という。)とみなす。
2 前項に規定する永住帰国した中国残留邦人等(六十歳以上の者に限る。)であって昭和三十六年四月一日以後に初めて永住帰国したもの(以下「特定中国残留邦人等」という。)は、旧被保険者期間又は新被保険者期間(同項の規定により旧被保険者期間又は新被保険者期間とみなされた期間を含み、旧国民年金法第五条第三項に規定する保険料納付済期間、国民年金法第五条第二項に規定する保険料納付済期間その他の政令で定める期間を除く。第四項において同じ。)に係る保険料を納付することができる。
3 国は、特定中国残留邦人等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該特定中国残留邦人等の旧被保険者期間(第一項の規定により旧被保険者期間とみなされた期間を含む。)及び昭和六十年法律第三十四号附則第八条第二項各号に掲げる期間(政令で定める期間に限る。)並びに国民年金法による被保険者期間(第一項の規定により新被保険者期間とみなされた期間を含み、政令で定める期間を除く。)に応じ、政令で定める額の一時金を支給する。
4 国は、前項の一時金の支給に当たっては、特定中国残留邦人等が満額の老齢基礎年金等の支給を受けるために納付する旧被保険者期間又は新被保険者期間に係る保険料に相当する額として政令で定める額を当該一時金から控除し、当該特定中国残留邦人等に代わって当該保険料を納付するものとする。
5 永住帰国した中国残留邦人等に係る国民年金法に規定する事項及び前各項の規定の適用に関し必要な事項については、同法その他の法令の規定にかかわらず、政令で特別の定めをすることができる。

(支援給付の実施)
第十四条 この法律による支援給付(以下「支援給付」という。)は、特定中国残留邦人等であって、その者の属する世帯の収入の額(その者に支給される老齢基礎年金その他に係る厚生労働省令で定める額を除く。)がその者(当該世帯にその者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、その者以外の特定中国残留邦人等その他厚生労働省令で定める者があるときは、これらの者を含む。)について生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第八条第一項の基準により算出した額に比して不足するものに対して、その不足する範囲内において行うものとする。
2 支援給付の種類は、次のとおりとする。
 一 生活支援給付
 二 住宅支援給付
 三 医療支援給付
 四 介護支援給付
 五 その他政令で定める給付
3 支援給付を受けている特定中国残留邦人等であって、その者の属する世帯にその者の配偶者(特定中国残留邦人等以外の者に限る。以下この条において同じ。)があるものが死亡した場合において、当該特定中国残留邦人等の死亡後も当該配偶者の属する世帯の収入の額(厚生労働省令で定める額を除く。)が当該配偶者(当該世帯に厚生労働省令で定める者があるときは、その者を含む。)について生活保護法第八条第一項の基準により算出した額に比して継続して不足するときは、当該世帯に他の特定中国残留邦人等がある場合を除き、当該配偶者に対して、厚生労働省令で定めるところにより、支援給付を行うものとする。ただし、当該配偶者が当該死亡後に婚姻したとき(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者となったときを含む。)は、この限りでない。
4 この法律に特別の定めがある場合のほか、支援給付については、生活保護法の規定の例による。
5 支援給付の実施に当たっては、特定中国残留邦人等の置かれている事情にかんがみ、特定中国残留邦人等及びその配偶者が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするために必要な配慮をして、懇切丁寧に行うものとする。
6 支援給付については、政令で定めるところにより、支援給付を生活保護法による保護とみなして、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)その他政令で定める法令の規定を適用する。
7 前項に定めるもののほか、支援給付に関する事項に係る他の法令の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
8 前各項に定めるもののほか、支援給付の実施に関し必要な事項は、厚生労働省令で定める。

(譲渡等の禁止等)
第十五条 第十三条第三項の一時金及び支援給付を受ける権利は、譲渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。
2 租税その他の公課は、第十三条第三項の一時金及び支援給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。

(情報の提供)
第十六条 日本年金機構は、厚生労働大臣に対し、厚生労働省令で定めるところにより、第十三条第三項の一時金の支給及び同条第四項の保険料の納付に関して必要な情報の提供を行うものとする。

(一時帰国旅費の支給等)
第十七条 国は、中国残留邦人等が一時帰国する場合には、当該中国残留邦人等に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該一時帰国のための旅行に要する費用(当該一時帰国する中国残留邦人等に同行する当該中国残留邦人等の親族等であって厚生労働省令で定めるものがいる場合又は当該一時帰国のために介護人が必要な場合として厚生労働省令で定める場合には、当該親族等又は当該介護人の本邦への旅行に要する費用を含む。)を支給する。
2 国は、中国残留邦人等が一時帰国する場合には、当該中国残留邦人等並びに前項に規定する当該親族等及び当該介護人が出入国管理及び難民認定法その他出入国に関する法令の規定に基づき円滑に帰国し又は入国することができるよう特別の配慮をするものとする。

(事務の区分)
第十八条 第十四条第四項においてその例によるものとされた生活保護法別表の下欄に掲げる規定によりそれぞれ同表の上欄に掲げる地方公共団体が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

   附 則 [抄]

(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

   附 則 [平成6年11月9日法律第95号] [抄]

(施行期日等)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
 [第1号から第3号まで省略]
 四 第三条中厚生年金保険法第百三十六条の三の改正規定及び第十三条の規定 平成八年四月一日

   附 則 [平成11年12月22日法律第160号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。[後略]

   附 則 [平成19年7月6日法律第109号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、平成二十二年四月一日までの間において政令で定める日から施行する。[後略]

   附 則 [平成19年12月5日法律第127号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、平成二十年一月一日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、それぞれ当該各号に定める日から施行する。
 一 第十四条を第十七条とする改正規定及び第十三条の次に三条を加える改正規定(第十六条に係る部分に限る。)並びに附則第五条、第七条及び第八条の規定 公布の日
 三 第十三条の改正規定(同条第三項及び第五項に係る部分を除く。) 平成二十年三月一日
 四 第十七条の次に一条を加える改正規定及び第十三条の次に三条を加える改正規定(第十四条に係る部分に限る。)並びに次条から附則第四条まで及び附則第六条の規定 平成二十年四月一日

(支援給付の実施に関する経過措置)
第二条 前条第四号に掲げる規定の施行の際現に生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)による保護を受けている同号に掲げる規定による改正後の中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律(以下「新法」という。)第十四条第一項に規定する特定中国残留邦人等(新法第十三条第二項の特定中国残留邦人等をいう。以下同じ。)に対しては、厚生労働省令で定めるところにより、新法第十四条第一項の支援給付を行うものとする。

第三条 附則第一条第四号に掲げる規定の施行の際現に生活保護法の規定により設置され、若しくは認可され、又は指定されている保護施設又は医療機関、介護機関その他厚生労働省令で定める機関(以下「医療機関等」という。)は、新法第十四条第四項(次条第二項において準用する場合を含む。)においてその例によるものとされた生活保護法の規定により設置され、若しくは認可され、又は指定された保護施設又は医療機関等とみなす。

(施行前死亡者の配偶者に対する支援給付の実施)
第四条 特定中国残留邦人等であって、その者の属する世帯にその者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み、特定中国残留邦人等以外の者に限る。以下同じ。)があるものが附則第一条第四号に掲げる規定の施行前に死亡した場合において、当該配偶者(以下「施行前死亡者の配偶者」という。)が当該規定の施行の際現に生活保護法による保護を受けている者であり、かつ、当該規定の施行後も当該施行前死亡者の配偶者の属する世帯の収入の額(厚生労働省令で定める額を除く。)が当該施行前死亡者の配偶者(当該世帯に厚生労働省令で定める者があるときは、その者を含む。)について生活保護法第八条第一項の基準により算出した額に比して継続して不足するときは、当該世帯に他の特定中国残留邦人等又は新法第十四条第三項の規定により同条第一項の支援給付を受けることとなる配偶者がある場合を除き、当該施行前死亡者の配偶者に対して、厚生労働省令で定めるところにより、当該施行前死亡者の配偶者の生活を支援する給付(以下「支援給付」という。)を行うものとする。ただし、当該施行前死亡者の配偶者が当該死亡後に婚姻したとき(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者となったときを含む。)は、この限りでない。
2 新法第十四条第二項及び第四項から第八項まで並びに第十五条の規定は、支援給付について準用する。
3 前項において準用する新法第十四条第四項においてその例によるものとされた生活保護法別表の下欄に掲げる規定によりそれぞれ同表の上欄に掲げる地方公共団体が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。

(訴訟上の救助により猶予された費用に関する特例等)
第五条 この法律の公布の際現に係属している永住帰国した中国残留邦人等(中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律第二条第一項に規定する中国残留邦人等をいう。以下同じ。)又はその相続人その他の一般承継人であると主張する者が国家賠償法(昭和二十二年法律第百二十五号)第一条第一項の規定に基づき国に対して提起した訴えに係る訴訟であって、当該者(以下「原告」という。)が国の公務員は原告(原告が中国残留邦人等の相続人その他の一般承継人であると主張する者である場合にあっては、当該中国残留邦人等)を早期に帰国させる義務又はその帰国後にその自立の支援を行う義務に違反したと主張するものにおいて、訴訟上の救助により支払が猶予された費用については、この法律の公布後に当該訴訟につき原告が訴え(原告が敗訴した場合における上訴を含む。)を取り下げ、若しくは請求の放棄をし、又は当事者が裁判所において和解(訴訟を終了させることをその合意の内容とするものに限る。)をしたときは、国は、当該訴訟の原告に対し、これを請求することができない。
2 租税その他の公課は、前項の規定により原告が受ける経済的利益を標準として、課することができない。

以上

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