牛海綿状脳症対策特別措置法


公布:平成14年6月14日法律第70号
施行:平成14年7月4日
改正:平成15年5月30日法律第55号
施行:平成15年8月29日(附則第1条第1号:平成15年5月30日)
改正:平成15年7月16日法律第119号
施行:平成16年4月1日

(目的)
第一条 この法律は、牛海綿状脳症の発生を予防し、及びまん延を防止するための特別の措置を定めること等により、安全な牛肉を安定的に供給する体制を確立し、もって国民の健康の保護並びに肉用牛生産及び酪農、牛肉に係る製造、加工、流通及び販売の事業、飲食店営業等の健全な発展を図ることを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「牛海綿状脳症」とは、家畜伝染病予防法(昭和二十六年法律第百六十六号)第二条第一項の表十五の項に掲げる伝達性海綿状脳症のうち牛に係るものをいう。

(国及び都道府県の責務)
第三条 国及び都道府県(保健所を設置する市を含む。以下同じ。)は、牛海綿状脳症の発生が確認された場合又はその疑いがあると認められた場合には、次条に定める基本計画に基づき、速やかに、牛海綿状脳症のまん延を防止する等のために必要な措置を講ずる責務を有する。

(基本計画)
第四条 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、牛海綿状脳症の発生が確認された場合又はその疑いがあると認められた場合において国及び都道府県が講ずべき措置(以下この条において「対応措置」という。)に関する基本計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。
2 基本計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 対応措置に関する基本方針
 二 計画の期間
 三 牛海綿状脳症のまん延の防止のための措置に関する事項
 四 正確な情報の伝達に関する事項
 五 関係行政機関及び地方公共団体の協力に関する事項
 六 その他対応措置に関する重要事項
3 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を定め、又は変更しようとするときは、関係行政機関の長に協議するものとする。
4 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、基本計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するとともに、都道府県に通知するものとする。

(牛の肉骨粉を原料等とする飼料の使用の禁止等)
第五条 牛の肉骨粉を原料又は材料とする飼料は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、牛に使用してはならない。
2 牛の肉骨粉を原料又は材料とする牛を対象とする飼料及び牛に使用されるおそれがある飼料は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入してはならない。
3 前二項の規定による規制の在り方については、牛海綿状脳症に関する科学的知見に基づき検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるものとする。

(死亡した牛の届出及び検査)
第六条 農林水産省令で定める月齢以上の牛が死亡したときは、当該牛の死体を検案した獣医師(獣医師による検案を受けていない牛の死体については、その所有者)は、家畜伝染病予防法第十三条第一項の規定による届出をする場合その他農林水産省令で定める場合を除き、農林水産省令で定める手続に従い、遅滞なく、当該牛の死体の所在地を管轄する都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
2 前項の規定による届出を受けた都道府県知事は、当該届出に係る牛の死体の所有者に対し、当該牛の死体について、家畜伝染病予防法第五条第一項の規定により、家畜防疫員の検査を受けるべき旨を命ずるものとする。ただし、地理的条件等により当該検査を行うことが困難である場合として農林水産省令で定める場合は、この限りでない。

(と畜場における牛海綿状脳症に係る検査等)
第七条 と畜場内で解体された厚生労働省令で定める月齢以上の牛の肉、内臓、血液、骨及び皮は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、都道府県知事又は保健所を設置する市の長の行う牛海綿状脳症に係る検査を経た後でなければ、と畜場外に持ち出してはならない。ただし、と畜場法(昭和二十八年法律第百十四号)第十四条第三項ただし書に該当するときは、この限りでない。
2 と畜場の設置者又は管理者は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、牛の脳及びせき髄その他の厚生労働省令で定める牛の部位(次項において「牛の特定部位」という。)については、焼却することにより衛生上支障のないように処理しなければならない。ただし、学術研究の用に供するため都道府県知事又は保健所を設置する市の長の許可を受けた場合その他厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。
3 と畜業者その他獣畜のと殺又は解体を行う者は、別に法律又はこれに基づく命令で定めるところにより、と畜場内において牛のと殺又は解体を行う場合には、牛の特定部位による牛の枝肉及び食用に供する内臓の汚染を防ぐように処理しなければならない。

(牛に関する情報の記録等)
第八条 国は、牛一頭ごとに、生年月日、移動履歴その他の情報を記録し、及び管理するための体制の整備に関し必要な措置を講ずるものとする。
2 牛の所有者(所有者以外の者が管理する牛については、その者)は、牛一頭ごとに、個体を識別するための耳標を着けるとともに、前項の情報の記録及び管理に必要な情報を提供しなければならない。

(牛の生産者等の経営の安定のための措置)
第九条 国は、基本計画に定められた計画の期間において、牛海綿状脳症の発生により経営が不安定になっている牛の生産者、牛肉に係る製造、加工、流通又は販売の事業を行う者、飲食店営業者等に対し、その経営の安定を図るために必要な措置を講ずるものとする。

(協力依頼)
第十条 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、独立行政法人、地方公共団体、地方独立行政法人、獣医師の組織する団体、牛の生産者等の組織する団体又は牛海綿状脳症に係る試験研究若しくは検査を行う法人等に対し、牛海綿状脳症に関する専門家の派遣その他必要な協力を求めることができる。
2 都道府県知事及び保健所を設置する市の長は、国、独立行政法人、他の地方公共団体、地方独立行政法人、獣医師の組織する団体、牛の生産者等の組織する団体又は牛海綿状脳症に係る試験研究若しくは検査を行う法人等に対し、牛海綿状脳症の検査に係る協力その他必要な協力を求めることができる。

(正しい知識の普及等)
第十一条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じた牛海綿状脳症の特性に関する知識その他牛海綿状脳症に関する正しい知識の普及により、牛海綿状脳症に関する国民の理解を深めるよう努めるとともに、この法律に基づく措置を実施するに当たっては、広く国民の意見が反映されるよう十分配慮しなければならない。

(調査研究体制の整備等)
第十二条 国及び都道府県は、牛海綿状脳症の検査体制の整備、牛海綿状脳症及びこれに関連する人の疾病の予防に関する調査研究体制の整備、研究開発の推進及びその成果の普及並びに研究者の養成その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

   附 則

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。ただし、第六条第二項の規定は、平成十五年四月一日から施行する。

(飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部改正)
第二条 飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(昭和二十八年法律第三十五号)の一部を次のように改正する。
  第二条の七中「販売した場合」の下に「又は販売の用に供するために保管している場合」を加える。
  第十八条第一項及び第二項中「開始した日から一月以内」を「開始する二週間前まで」に改める。
  第十九条第一項中「又は輸入した」を「、又は輸入した」に、「及び数量」を「、数量その他農林水産省令で定める事項」に改め、同条第二項中「飼料添加物を」の下に「譲り受け、又は」を加え、「及び相手方の氏名又は名称」を「、相手方の氏名又は名称その他農林水産省令で定める事項」に改め、同条第三項中「二年間」を「二年以上で農林水産省令で定める期間」に改める。
  第二十条第三項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
 3 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、飼料の使用者から、飼料の使用に関し必要な報告を徴することができる。
  第二十一条第六項中「又は第二項」を「から第三項まで」に改め、同項を同条第七項とし、同条第五項中「、第二項又は第三項」を「から第四項まで」に改め、同項を同条第六項とし、同条第四項中「前三項」を「前各項」に改め、同項を同条第五項とし、同条第三項を同条第四項とし、同条第二項の次に次の一項を加える。
 3 都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、飼料の使用者の畜舎その他飼料の使用に関係がある場所に立ち入り、飼料、その原料若しくは材料若しくは飼料の使用の状況を検査させ、関係者に質問させ、又は飼料若しくはその原料を試験のため必要な最小量に限り、無償で収去させることができる。
  第二十一条の二第四項中「前条第四項及び第五項」を「前条第五項及び第六項」に、「同条第六項」を「同条第七項」に改める。
  第二十二条の見出しを「(厚生労働大臣との関係)」に改め、同条を同条第二項とし、同条に第一項として次の一項を加える。
   農林水産大臣は、第二条第三項の指定、第二条の二第一項の規定による基準若しくは規格の設定、改正若しくは廃止、第二条の六の規定による禁止又は第二条の七の規定による命令をしようとする場合において、必要があると認めるときは、厚生労働大臣に意見を求めることができる。
  第二十二条に次の一項を加える。
 3 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、前二項の規定の円滑な実施を図るため、相互に情報又は資料を提供するものとする。
  第二十七条中「一に」を「いずれかに」に、「三十万円」を「百万円」に改める。
  第二十八条中「一に」を「いずれかに」に、「二十万円」を「五十万円」に改める。
  第二十八条の二中「二十万円」を「五十万円」に改める。
  第二十九条中「一に」を「いずれかに」に、「二十万円」を「五十万円」に改める。
  第三十条中「一に」を「いずれかに」に、「十万円」を「三十万円」に改め、同条第二号中「又は第二項」を「から第三項まで」に改め、同条第三号中「若しくは第二項」を「から第三項まで」に改める。
  第三十条の二中「一に」を「いずれかに」に、「十万円」を「三十万円」に改め、同条第二号中「第二十条第三項」を「第二十条第四項」に改め、同条第三号中「第二十一条第三項」を「第二十一条第四項」に改める。
  第三十一条ただし書を削る。
  第三十三条中「一に」を「いずれかに」に、「三万円」を「十万円」に改める。

(飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
第三条 この法律の施行前に前条の規定による改正前の飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(以下「旧法」という。)第十八条第一項の規定による届出をした製造業者若しくは輸入業者又は同条第二項の規定による届出をした販売業者は、それぞれ前条の規定による改正後の飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律(以下「新法」という。)第十八条第一項又は第二項の規定による届出をしたものとみなす。
2 この法律の施行の際現に旧法第十八条第一項に規定する製造業者若しくは輸入業者又は同条第二項に規定する販売業者である者であって、その事業を開始した日から一月を経過していないもの(前項に規定する者を除く。)についての新法第十八条第一項又は第二項の規定の適用については、同条第一項及び第二項中「開始する二週間前までに」とあるのは、「開始した日から一月以内に」とする。
3 この法律の施行の日(以下「施行日」という。)から起算して二週間を経過する日までに新法第十八条第一項に規定する製造業者若しくは輸入業者又は同条第二項に規定する販売業者となる者であって、第一項に規定する者以外のものについての同条第一項又は第二項の規定の適用については、同条第一項及び第二項中「開始する二週間前までに」とあるのは、「開始する日までに」とする。
4 新法第十九条の規定は、施行日以後にされた飼料又は飼料添加物の製造若しくは輸入又は譲受け若しくは譲渡しに係る帳簿について適用し、施行日前にされた飼料又は飼料添加物の製造若しくは輸入又は譲渡しに係る帳簿の記載事項及び保存期間については、なお従前の例による。

(家畜伝染病予防法の一部改正)
第四条 家畜伝染病予防法の一部を次のように改正する。
  目次中「第六十二条の四」を「第六十二条の五」に改める。
  第二条第一項の表十五の項中「伝染性海綿状脳症」を「伝達性海綿状脳症」に改める。
  第四条の二第三項中「家畜の」を「家畜又はその死体の」に改め、「当該家畜」の下に「又はその死体」を加え、同条第五項中「家畜の所有者」を「家畜又はその死体の所有者」に、「家畜について」を「家畜又はその死体について」に改め、同条第六項第三号中「家畜」の下に「又はその死体」を加える。
  第五条第一項中「家畜の」を「家畜又はその死体の」に、「家畜について」を「家畜又はその死体について」に改め、同条第二項第三号中「家畜」の下に「又はその死体」を加える。
  第七条及び第八条中「による検査」の下に「を受けた家畜若しくはその死体」を加える。
  第十七条第一項、第二十一条第一項第一号及び第五項並びに第二十三条第四項中「伝染性海綿状脳症」を「伝達性海綿状脳症」に改める。
  第五章中第六十二条の四を第六十二条の五とし、第六十二条の三を第六十二条の四とし、第六十二条の二の次に次の一条を加える。
  (厚生労働大臣との関係)
 第六十二条の三 農林水産大臣は、家畜から人に伝染するおそれが高いと認められる家畜の伝染性疾病についてこの法律の規定による家畜の伝染性疾病の発生の予防又はまん延の防止のための措置を講じようとする場合において、必要があると認めるときは、厚生労働大臣に意見を求めることができる。
 2 厚生労働大臣は、家畜から人に伝染するおそれが高いと認められる家畜の伝染性疾病の発生又はまん延により国民の健康に影響を与えるおそれがあると認めるときは、この法律の規定による家畜の伝染性疾病の発生の予防又はまん延の防止のための措置の実施に関し、農林水産大臣に意見を述べることができる。
 3 農林水産大臣及び厚生労働大臣は、前二項の規定の円滑な実施を図るため、相互に情報又は資料を提供するものとする。

(獣医師法の一部改正)
第五条 獣医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)の一部を次のように改正する。
  第二十一条第二項中「三年間」を「三年以上で農林水産省令で定める期間」に改める。
  第二十九条中「一に」を「いずれかに」に改め、同条第五号中「三年間」を削る。

(獣医師法の一部改正に伴う経過措置)
第六条 前条の規定による改正後の獣医師法第二十一条第二項の規定は、施行日以後にされた診療又は検案に係る診療簿又は検案簿について適用し、施行日前にされた診療又は検案に係る診療簿又は検案簿の保存期間については、なお従前の例による。

(罰則に関する経過措置)
第七条 この法律の施行前にした行為並びに附則第三条第四項及び前条の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(食品の安全に関する行政の見直し)
第八条 政府は、牛海綿状脳症の発生を予防できなかったことにかんがみ、関係府省の連携を強化する観点から、生産から消費に至る食品の安全に関する行政の抜本的な見直しにつき検討するものとする。

   附 則 [平成15年5月30日法律第55号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
 一 第四条並びに附則第九条、第十条(食品安全基本法(平成十五年法律第四十八号)第二十二条に規定する食品安全委員会(以下この条及び附則第十条において「食品安全委員会」という。)に係る部分を除く。)、第十二条、第十三条及び第二十九条の規定 公布の日

   附 則 [平成15年7月16日法律第119号] [抄]

(施行期日)
第一条 この法律は、地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)の施行の日から施行する。[後略]

以上

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